【F2.8 30sec ISO4000 レンズ:EF24-70mm F2.8L Ⅱ USM】
平家の落人伝説が残る、霧に包まれし集落
徳島県・祖谷(いや)
祖谷地方の故(ふる)きを温(たず)ねるならば、まずは国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている落合集落に足を運んでみよう。細く、くねくねとした山道をひた走り、ようやく辿り着いた先に広がる山村風景は、文字通り秘境の名にふさわしい。かつて平家の落人たちが隠れ住んだといわれるこの集落には、300年以上前に建てられた茅葺屋根の古民家も残っている。一方で、古民家の趣はそのままに、システムキッチンや床暖房などの最新設備を導入した快適な宿泊施設も誕生しているのが面白いところ。かずら橋や鉾杉など、祖谷を巡る上で平家の落人伝説をはじめとした歴史的な背景は欠かせないが、ただ時の止まった場所ではなく、「いま」も新しい試みが生まれているのだということを知っておきたい。まさに「温故知新」という言葉を体現している地域なのだ。落合集落の全景は、谷を挟んだ反対側にある「落合集落展望所」から望むことができる。もちろん日中に見られる全容も美しいが、せっかくなら集落内に宿をとって、夜や明け方の時間を体感してほしい。大きな生き物のように流れゆく霧の合間から、ときおり走る車のヘッドライトや民家の灯りが浮かび上がる様は、まるで物語の一幕。ひとたびシャッターを切れば、なおいっそう深く、幻想的な世界が浮かび上がる。
落合集落
祖谷川と落合川が合流する地点から、高低差約390mという山の斜面に沿って広がる集落。点々と佇む古民家や畑は、どこか懐かしい日本の原風景として、訪れる人の心を癒してくれる。夜や明け方といった薄暗い時間に霧がかかると、まるで天空の町のような趣に
DATA
- 徳島県三好市
- 面積:721.42km2
- 人口:2万9951人(2010年度国勢調査)
- 世帯数:1万1998世帯(2010年度国勢調査)
この地に流れてきた1000年の時を旅する
すれ違う人の輪郭さえも薄闇に溶け出す黄昏時。およそ人の暮らす場所とは思えぬ山の斜面に、ぽつり、ぽつぽつと、明かりが灯っていく。ここ、落合集落をはじめとした祖谷地方には、平家の落人伝説が色濃く残り、日本三大秘境のひとつとしても知られている。元禄時代に建てられた古民家、平家の哀話を語り継ぐ架け橋、樹齢800年と推定される荘厳な杉。遠い昔に時間が止まってしまったかのような風情は、まさに隠れ里の名にふさわしい。しかしそんな祖谷に、近年は新たな宿泊施設やカフェが生まれている。この地に魅せられて移住してきた人々が、外の風を運んできているのだ。かつて悲しみに暮れた平家の記憶は、現代のヨソモノたちの手によって、いま、そのかたちを変えようとしている。
原始的な自然のもたらす恩恵を五感で味わう
いつからか“秘境”と謳われ、どこか神秘的な雰囲気を醸し出す祖谷地方。1000年前の、500年前の、あるいは現在の日本の美しさが、訪れる人々を時間旅行へと誘ってくれる。
観る
「鉾杉」
1185(元歴2)年、屋島の合戦で敗れた祖谷に逃れた平国盛が、鉾を奉納し、鉾神社を祀る際に植えられたという伝説が残る。樹齢はおよそ800年と推定され、別名は「国盛杉」。同敷地内には、祖谷地方で最も大きな武家屋敷である「旧喜多家住宅」もある
住所:三好市東祖谷大枝
体験する
「ラフティング」
吉野川の激流によって生まれた美しい渓谷「大歩危・小歩危」は、ラフティングの名所としても知られる。アウトドアショップやお土産店、ラーメン店、祖谷そば店などを有する観光&ラフティング拠点施設「West-West」でも、初心者向けの体験ツアーを実施
食べる
「祖谷美人」
地元のそばの実と湧水を使用し、挽きたて、打ちたて、切りたて、茹でたてにこだわった、太くて短い祖谷そばを味わえる。オススメは丼いっぱいの甘い油揚げが入った「ぼけあげそば」(850円)。持ち帰り用のそばやお土産もここで購入することができる
住所:徳島県三好市 西祖谷山村善徳9-3
Tel:0883-87-2009
柄木孝志(からき・たかし)
鳥取県米子市にIターン。鳥取県が誇る名峰・大山を主に、地元の美しい風景を切り撮るなど写真活動を中心とした地域活性化事業に取り組む。東京カメラ部10選
より高感度になったことで、
夜間撮影のシャッターチャンスが増えました
星空を撮影することの多い僕にとって、高感度に強いモデルというのは、それだけでも重宝します。加えてこのMark Ⅳは、感度を上げてもノイズが出にくい。従来であれば、ノイズが出ないぎりぎりの感度に調整して撮影するか、最終的に補正をしていました。高感度で撮っても限りなく自然な仕上がりになるというのは、本当にうれしいことです。