【F7.1 1/50sec ISO100 レンズ:EF70–200mm f/2.8L IS Ⅱ USM】
身体だけでなく目も心も癒す湯治場
秋田県・八幡平(はちまんたい)
山々が一年に一度のおめかしをはじめると、人も、キツネやウサギといった野生動物たちも、どこかそわそわしてひょっこりと顔をのぞかせる。
いまだ手つかずの雄大な自然が残る八幡平に見守られ、乳頭温泉郷、玉川温泉などを抱く秋田県の田沢湖周辺地域は、古くから湯治場として人々の疲れを洗い流してきた。時の秋田藩主が、猟師が、あるいは硫黄精錬の労働者たちが、皆それぞれの理由から、静養のために湯浴みを行ってきたのだ。赤、青、黄色と、色とりどりに揺れる景色を眺めながら、首まで湯に浸かる。
身体と心が求める安らぎは、500年前も、1000年先も、案外同じようなところにあって、それこそが無意識のうちに受け継がれてきた日本人の原風景なのかもしれない。
大深沢展望台
八幡平の標高1560m 地点にあり、大深沢展望台の眼下に広がる景色。天気がよい日には、遠く岩手山や月山、鳥海山、秋田駒ヶ岳といった山々の美しい山容を見渡すことができる
DATA
- 秋田県八幡平(鹿角市・仙北市)
- 面積:1801.08km2
- 人口:5万8096人(2010年度国勢調査)
- 世帯数:2万3856世帯(2016年9月末現在)
紅葉と温泉。それだけでいい、それだけがいい
乳頭温泉や玉川温泉といった湯治場が点在する秋田県の田沢湖周辺。雄大な自然が織り成す四季折々の美しい風景を楽しむことができるが、やはりイチオシは「紅葉と温泉」を堪能する秋旅だ。
国立公園にも指定されている八幡平や抱返(だきがえ)り渓谷で望むダイナミックな錦の世界に、田沢湖や大沼の水面に揺れる幻想的な色模様など、記憶だけでなく写真にもおさめたくなる美景が随所に広がっている。角館の武家屋敷通りまで足を運び、真っ赤なもみじの下を歩きながら、在りし日の日本にタイムスリップしてみるのもまた一興。
たっぷりと秋の空気を吸い込んだら、少し早めに切り上げて温泉へ。乳頭温泉と玉川温泉はどちらも数百年の歴史を持つ名湯で、風情も抜群。どうしても選びきれなかったら、2日に分けてどちらにも浸かっていけばいい。きっとこの地を旅しているうちに、「そんなにせかせかしなくてもいいか」という気分になるはずだから。
民藝品である樺細工や、伝統の山の芋料理を味わう
「紅葉を見ながらのんびり温泉にでも浸かりたい」。それ自体は誰でも思いつくありふれた旅のテーマかもしれないが、どうせなら、最高の美景と味覚を探しに出かけてみよう。
観る
「八幡沼」
八幡平の頂上から見下ろす八幡沼。周囲は約1.5kmと八幡平にある池や沼の中では最大で、整備された木道に沿って散策することが可能だ。沼の奥に見える小さな丘は源太森火山。冬になると、アオモリトドマツの美しい樹氷が見られることでも知られている
住所:岩手県八幡平市八幡沼
問:八幡平市観光協会
Tel:0195-78-3500
http://www.hachimantai.or.jp/index.html
買う
「角館 伝四郎」
角館の武家屋敷通りから徒歩約5分の場所に位置し、1851(嘉永4)年の創業以来、上質な樺細工をつくり続けている老舗。モダンな装いの店内には、長い歴史によって培われた技術を生かし、現代のライフスタイルや価値観に沿うよう考案された商品が並ぶ
住所:秋田県仙北市角館町下新町45
問:藤木伝四郎商店
Tel:0187-54-1151
http://denshiro.jp/
食べる
「鶴の湯」
古くから滋養・強壮の不老長寿食品として重宝されてきた山の芋がごろごろと入った鍋、山菜料理や岩魚の塩焼きなどが並ぶ定食は2060円。ランチのみの利用も可能で、火の入った囲炉裏を囲みながら食事することができる。その他、うどんやそば、丼ものも用意
住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字湯ノ岱-1
問:鶴の湯別館 山の宿
Tel:0187-46-2100
http://www.tsurunoyu.com/FONDMENT/y-annai.html
八木千賀子(やぎ・ちかこ)
自然奏フォト名古屋に所属。写真家・辰野清氏、栄馬智太郎氏に師事。長野をはじめ、東海地方、伊豆諸島などの美しい自然風景を撮影。東京カメラ部10選
タッチパネルにより、
刻々と変化する風景の速さに対応しやすくなしました
風景撮影では、設定を細かく変更しながら何パターンも写真を撮ります。その際、ライブビューとタッチパネルの組み合わせが想像以上に快適でした。このクラスのカメラで直感的に、かつスピーディーに設定を変更することが可能で、その効果もすぐモニターに反映される。明け方のように、刻一刻と景色が変わっていく状況下で、この機能は大きなメリットです。