HOTEL

《北こぶし知床ホテル&リゾート》
|サウナを通して地域をまるごと味わう

2022.4.21
《北こぶし知床ホテル&リゾート》<br><small>|サウナを通して地域をまるごと味わう
世界中のサウナ室でも数えるほどしかない、木材でうねる曲線を描いたUNEUNA。3Dの5軸加工という特殊技術で演出された世界は、檜の香りがほんのり漂う

第3次ブームといわれ、ポップカルチャーとして定着したサウナはいま、各地でかつてない多様化と進化を見せている。そこで、ムーブメントを牽引する「ととのえ親方」松尾大さんの監修で、サウナを通して地域をまるごと味わう〝サ旅〟の魅力から、わざわざでも訪れたい全国の外せないサウナ施設まで紹介!

≪前の記事を読む

世界遺産 北海道・知床の
流氷でととのう旅

オホーツク海の南端に突出した知床半島は、北海道東部の斜里町と羅臼町にまたがる長さ約70㎞の半島だ。西側がオホーツク海、東側が根室海峡に面し、流氷が接岸する北半球最南端の地でもある。その流氷には豊かな栄養が含まれ、春になって融解するとプランクトンが増殖し、それらを餌に小魚や甲殻類、貝類が繁殖。大型回遊魚やアザラシなどの海獣類がそれらを捕食し、河川を遡上する鮭や鱒は、森に生息するヒグマやキタキツネ、シマフクロウなどの食糧になる。

海、川、陸にわたるこのダイナミックな生態系の形成とオジロワシやシレトコスミレといった稀少な動植物、そして独自の生態系を守り共生する環境が評価され、2005年、北海道東部の知床地域が世界自然遺産に登録された。以来、語源といわれているアイヌ語の「シリエトク(地の果て)」を感じる絶景を求め、国内外からツーリストが訪れているが、その世界遺産を望む絶好の地に建つのが「北こぶし知床ホテル&リゾート」だ。1960年の開業以来、心からのホスピタリティと天然温泉、そして北の大地ならではの美食でゲストをもてなす名ホテルのサウナが’21年、ドラスティックにリニューアルされ話題となっている。

サウナの中から、知床の文化に触れる

シャープな直線で雄大な流氷をイメージしたKAKUUNA。眼下に望めるのは知床連山や、海面をすべるように飛ぶカモメやオジロワシ、行き交う漁船。知床の営みが広がる
「刻々と変化していく流氷は、どれだけ眺めていても飽きません」

景観、素材、音
すべてから北海道を感じる

サウナストーンは、地下30km以深にあるマグマから生成されたものを採掘して使用。15分に一度オートロウリュされ、心地よい蒸気がサウナ室に充満する

北こぶし知床ホテル&リゾートの大浴場は、オホーツク海に浸かっているような浮遊感を覚える展望露天風呂をはじめ、至福の湯浴みが堪能できる名湯として名高い。ととのえ親方は併設のサウナ室のリニューアルを手掛けた。

「サウナ室全体で知床の大自然を感じてもらえる〝日本にまだないサウナ〟を目指しました」

その言葉は、まず「UNEUNA」に入って痛感した。大きく取られた窓からパノラマで広がるのは、彼方の水平線まで広がる、混じりけのない流氷原。遮るもののない世界遺産の壮観な光景に、思わず息をのんでしまう。

知床の森の洞窟をイメージしたUNEUNAは、ゆるやかな曲線でうねりを描いた独創的なデザイン。唯一無二の空間は日本でもひと握りの3D木材加工技術をもつ「アーティストリー」との出会いによって実現したという。

約15℃に設定された屋内の水風呂は、知床の軟らかい真水を使用。「サウナも水風呂も何分とか決めず、自分が気持ちいいと感じる加減で楽しむのがコツです」
外気浴を楽しみ、ととのった親方。サウナは脱水状態になりがちなので水分補給が欠かせない。水よりも体液に近いとされるイオンウォーターは、サウナーにも人気が高い

一方、「KAKUUNA」は、ダイナミックな流氷をイメージし、力強く直線的なデザイン。サウナストーブを囲む壁面には六方石を使用し、火山から流れ出た溶岩がつくる割れ目に見られる「柱状節理」の岩肌が表現されている。

サウナ室にはテレビはない。目を閉じて心地よい汗を感じながら聞こえてくるのは、知床の青空を舞う鳥や「キュイキュイ」という流氷がひしめく音。このサウンドは、アーティスト・松本一哉さんが知床の地で環境音との即興演奏を録音・制作した音源が使用されている。情景や建築、素材、そして音まで、全身で知床の壮大なスケールと神秘性を体感できるサウナは、わざわざこのためだけに訪れる価値がある。

オーシャンビューの露天風呂が開放的な「オホーツク倶楽部デラックス露天風呂付客室」。室内暖炉やロッキングチェアなどを備えたウォールナットカラーの空間に高級感が漂う
オホーツク倶楽部のゲストが利用できる「グリル知床」では、地元で捕れた蝦夷鹿や知床鳥など地産の食材が味わえる。上写真の蝦夷鹿のグリルは、癖のない赤身の妙味が堪能できる

驚くのはこれだけではない、2022年2月には、全30室のラグジュアリーなクラブフロア「オホーツク倶楽部」に、「オホーツク倶楽部サウナ付スパスイート」が完成。プライベートな空間で露天風呂とサウナ、水風呂、そして外気浴スペースが満喫できる至極の空間は、2室限定につき早くも予約が殺到しているとか。

ととのった後は、オホーツク倶楽部の客室で寛ぎのひとときを過ごしたい。暖炉やトドマツ材が温かみを演出し、ただそこにいるだけで豊かな時間を味わえる。そして夕景に目を奪われた後に待っているのは「グリル知床」のディナーだ。「知床エゾシカファーム」から仕入れる上質な鹿肉をはじめ、地野菜やみずみずしい魚介をふんだんに使用し、独自のスタイルで供されるコース料理に五感が満たされる。

絶景のサウナだけでなく、食や空間からも知床に触れる――。この特別な体験に日本の豊潤なサウナツーリズムの醍醐味が凝縮されていた。

北こぶし知床ホテル&リゾート
住所|北海道斜里郡斜里町ウトロ東172
Tel|0152-24-3222(平日10:00〜18:00)
料金|1泊2食付1万7670円~(サ込・税別、入湯税別)、日帰り2200円(タオルセット330円)
客室数|178室(西館オホーツク倶楽部客室30室)
IN|15:00
OUT|10:00
サウナ利用可能時間|宿泊/KAKUUNA15:00~24:00(女性)、翌5:00~9:30(男性)、UNEUNA15:00~24:00(男性)、翌5:00~9:30(女性)、日帰り/7:00~9:30、14:00~20:00退館(最終受付18:00)
※ホテル滞在中の宿泊客は14:00から利用可
収容人数|10名
タイプ|ドライサウナ
温度|90℃
水風呂|約15℃(水深90㎝)
ロウリュ|オートロウリュ(15分に1回)
休憩スペース|内湯〇、外気浴〇
その他の設備|内湯、露天風呂
 
 

≫公式サイトはこちら

 

 

静岡・伊豆市《おちあいろう》
 
≫次の記事を読む

 

text: Ryosuke Fujitani photo: Akio Nakamura
Discover Japan 2022年4月号「身体と心をととのえる春旅へ。」

北海道のオススメ記事

関連するテーマの人気記事