ART

《パビリオン・トウキョウ2021》
東京の風景を建築家たちがビッグスケールで表現。

2021.8.10
《パビリオン・トウキョウ2021》<br><small>東京の風景を建築家たちがビッグスケールで表現。</small>
茶室「五庵」設計:藤森照信 撮影:ToLoLo studio

東京都ならびに公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京が主催するTokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13のひとつ「パビリオン・トウキョウ2021」が東京の至る所で展開されている。

新国立競技場を中心とする複数の場所に、建物やオブジェを設置し、自由で新しい都市のランドスケープを提案する世界初の試み。観客は、地図を片手に宝探しのように、あるいは散歩のかたわらに、世界で活躍する建築家やアーティストたちがそれぞれの未来への願いを表したパビリオンを巡ることができる。

妹島和世
「水明」

水明 設計:妹島和世 撮影:妹島和世建築設計事務所

浜離宮恩賜庭園は、潮入の池(海水を導き潮の満ち引きによって池の趣を変える池)とふたつの鴨場をもつ江戸時代の代表的な大名庭園。妹島和世氏は、汐留の高層ビル群を背に広がるこの伝統的な庭園を「歴史と現代という東京のふたつの側面にふれることができる場所だ」と確信し、多様な水場をもつ庭園に合わせて、曲水(平安時代の庭園にあった水路)をイメージしたパビリオンを設計した。

鏡面の水路に浅く張られた水は、空や周囲の風景を映してきらきらと輝く。設置されたのは明治初期に整備された迎賓館「延遼館」があった場所。タイトルの「水明」は、澄んだ水が日や月の光で美しく輝く様子を示す言葉。東京のこれまでを映しながらも常に変わり続ける水面から、清らかな未来を想像できるように、という期待が込められている。

妹島氏は建築内外の関係をつなげ、様々な人がそれぞれの時間を過ごせる公園のような空間を設計し続けている、日本を代表する建築家。

妹島和世(せじま・かずよ)
1956年生。日本女子大学大学院家政学部住居学科修了。1987年妹島和世建築設計事務所設立。1995年西沢立衛と共にSANAAを設立。代表作に〈金沢21世紀美術館〉、ニューヨークの〈ニュー・ミュージアム〉、〈ルーヴル・ランス〉、〈すみだ北斎美術館〉(妹島事務所として)、最新作〈大阪芸術大学アートサイエンス学科棟〉(妹島事務所として)など。2010年、第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展にて、日本人、そして女性として初めて総合ディレクターを務める。プリツカー賞、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞、日本建築学会賞、紫綬褒章(個人として)、他受賞多数。※上記の建築作品、受賞は特記のない限りSANAA名義。

妹島和世「水明」
会場|浜離宮恩賜庭園 延遼館跡(東京都中央区浜離宮庭園 浜離宮恩賜庭園 〈大手門口〉より)
鑑賞時間|9:00〜17:00(入園は16:30まで)
※見学には、浜離宮恩賜庭園への入園料が必要。

藤本壮介
「Cloud pavilion/雲のパビリオン」

第一会場 Cloud pavilion(雲のパビリオン)設計:藤本壮介 撮影:木奥恵三
第二会場 Cloud pavilion(雲のパビリオン)設計:藤本壮介 撮影:後藤秀二

藤本壮介氏が設計したのは、雲の形をしたパビリオン。藤本氏にとって雲は憧れのような存在だと言い、「とてつもなく大きく、さまざまなものをすべて包み込んでしまう究極の建築」と感じるとも語っている。世界中の様々な国や地域や状況の上に浮かぶ「世界の大屋根」のような存在である雲にインスピレーションを受けて、「全ての人のための場所」というコンセプトのもと、多様性と寛容性を象徴する場所として考案した。

このパビリオンは代々木公園と高輪ゲートウェイ駅という、自然の中と最新の駅舎という全く異なる2箇所に設置されている。同じものが異なる場所に設置されることで、様々な場所を包む雲というコンセプトを伝えるとともに、それぞれの場所の違いが見えてくることを狙っている。

藤本氏は、自身が「原初的な未来の建築」と表現する建築・都市・風景を生み出し、世界中から注目を集めている建築家。

藤本壮介(ふじもと・そうすけ)
1971年生。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年に藤本壮介建築設計事務所を設立。主な作品に〈武蔵野美術大学美術館・図書館〉、ロンドンの〈サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013〉、フランス モンペリエの〈L’Arbre Blanc〉、最新作〈白井屋ホテル〉など。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞、2015年パリ・サクレー・エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター国際設計競技最優秀賞につぎ、2016年Reinventer.paris国際設計競技ポルトマイヨ・パーシング地区最優秀賞を受賞。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場デザインプロデューサーを務める。

藤本壮介「Cloud pavilion/雲のパビリオン」
第一会場|代々木公園 パノラマ広場付近(東京都渋谷区代々木神園町、神南二丁目 代々木公園 〈原宿門〉より)
鑑賞時間|10:00〜18:00

第二会場|高輪ゲートウェイ駅 改札内(東京都港区港南2-1-220
鑑賞時間|初電から終電まで

藤森照信
茶室「五庵」

茶室「五庵」設計:藤森照信 撮影:ToLoLo studio

藤森照信氏は自然と一体となった建築を作り続けており、この茶室「五庵」では基壇を芝が覆っている。上部の外壁に用いられている焼杉は、杉材の表面を焼いて炭化させたもので、表面の炭化層が板の劣化を防ぎ耐火性を高くする。

1階の待合に入り、梯子で2階の茶室に上がると、大きな窓から新国立競技場が見える。梯子は「にじり口」の再解釈で、暗くて狭い場所を通り、茶室という別世界に移動させる機能を持つ。歴史家としての膨大な知識に裏付けされた「どこにもない」建築が藤森作品の魅力。

藤森氏は、日本を代表する建築史家であるとともに、45歳で建築家としてデビューした異色の存在。代表作に「ラ コリーナ近江八幡」の「草屋根」、「銅屋根」、「多治見市モザイクタイルミュージアム」などがあり、新国立競技場の斜向かいに建つ茶室「五庵」は、これまで藤森が数多く作ってきた茶室の最新作だ。

藤森照信(ふじもり・てるのぶ)
1946年生。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。現在、江戸東京博物館館長、東京大学名誉教授、工学院大学特任教授。近代建築史・都市史研究を経て1991年、45歳のときに〈神長官守矢史料館〉で建築家としてデビュー。土地固有の自然素材を多用し、自然と人工物が一体となった姿の建物を多く手掛けている。建築の工事には、素人で構成される「縄文建築団」が参加することも。代表作に〈タンポポハウス〉、〈ニラハウス〉、〈高過庵〉など。近作に〈多治見市モザイクタイルミュージアム〉や「ラ コリーナ近江八幡」の〈草屋根〉、〈銅屋根〉などがある。

藤森照信 茶室「五庵」
会場|ビクタースタジオ前(東京都渋谷区神宮前2-21-1
鑑賞時間|11:00〜19:00(土曜日12:00〜19:00)
※しばらくの間、平日・日曜・祝日の内部入場は18:00まで。(土曜日は19:00まで)
※内部入場には事前予約が必要。

平田晃久
「Global Bowl」

Global Bowl 設計:平田晃久 撮影:ToLoLo studio

平田晃久氏が設計したこのお椀のような形のパビリオンは、通り抜けたり座ったりすることができる。様々な人たちがこのパビリオンを通り抜けることのできる、孔だらけのパビリオンは、内外の境界をほどきつつ結ぶ、反転する幾何学でできている。つまり、都市の中に小さな閉域をつくりながら、同時に外側とつながるのだ。国連大学前の敷地は、隣接する公開空地と湾曲する青山通りがつくり出す、都市の巨大なボイドが感じられる場所。このパビリオンは観測装置のように、このボイドのへそのような位置に置かれている。

木材を三次元カットして組み合わせる、日本の最新技術を生かした建築が、力強い物質感と工芸品のような緊張感を持って立ち上がり、都市の中に様々な文脈を引き寄せる、孔のような場所が生まれるだろう。また、この設置場所は、パビリオンのもつ「多様なものが共存する」というテーマとも共通する。

平田氏は建築を「生成する生命活動の一部」と捉え、生物や植物などの生態学の原理を設計に取り込んでいる。蝶々が花々の間を飛ぶように、隙間が重なり合って生まれる多様な領域を「からまりしろ」と呼び、そのような建築を作ることを目指している。

平田晃久(ひらた・あきひさ)
1971年生。京都大学大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所を経て、2005年に平田晃久建築設計事務所を設立。現在、京都大学教授。主な作品に〈Bloomberg Pavilion〉、〈Tree-ness House〉、〈太田市美術館・図書館〉など。2022年に完成予定の「神宮前六丁目地区第一市街地再開発事業」の外装・屋上デザインを手がける。第19回JIA新人賞、Elita Design Award、第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞(日本館)、日本建築設計学会賞、村野藤吾賞など受賞多数。2016年にニューヨーク近代美術館の「Japanese Constellation」展に参加。

平田晃久「Global Bowl」
会場|国際連合大学前(東京都渋谷区神宮前5-53-70
鑑賞時間|10:00〜18:00

オブリタレーションルーム 作: 草間彌生 ©YAYOI KUSAMA Yayoi Kusama / The obliteration room 2002–present Collaboration between Yayoi Kusama and Queensland Art Gallery. Commissioned Queensland Art Gallery. Gift of the artist through the Queensland Art Gallery Foundation 2012 Collection: Queensland Art Gallery, Australia 協力:オオタファインアーツ 撮影:木奥恵三

そのほかにも、石上純也氏が手がけた、歴史ある風景に溶け込むように、新しいけれど、もともとそこにあったような建築「木陰雲」や、木組みと植物が複雑に絡み合った姿を見ることができる、藤原徹平氏の「ストリート ガーデン シアター」。会田誠氏による、東京城ダンボールとブルーシートでできた2つの城「東京城」。草間彌生氏の、床、壁、家具、すべてが真っ白に塗られた部屋に、鑑賞者が色とりどりの丸いシールを貼っていく参加型のインスタレーション「オブリタレーションルーム」などもある。特別参加で、AIが生成する狂喜乱舞する東京の姿を表現した真鍋大度 + Rhizomatiksによる“2020-2021”も注目だ。

また期間中には、「パビリオン・トウキョウ2021」をより深く知り、楽しんでもらい、多くの方に足を運んでもらえるよう「パビリオン・トウキョウ2021展 at ワタリウム美術館」を2021年6月19日(土)〜9月5日(日)まで開催中。

展示室では、クリエイター7名によるパビリオン制作時のプロセス、スケッチや図面、模型、実際に使用された素材などを展示。またそれぞれのパビリオンのコンセプトについて自身が語る映像のほか、7名のクリエイターのこれまでの活動や作品を伝える〈特別年表〉やドキュメントや映像も楽しめる。

実行委員会の委員長を務めるワタリウム美術館の和多利恵津子氏は、「コロナ禍により世界が大きく変化しようとしている2021年夏、存在し得ない不思議なパビリオンが東京の街に出没したということを、多くの人の心の中に届けられたら」と語る。

「パビリオン・トウキョウ2021展 at ワタリウム美術館」会場風景 撮影:後藤秀二

2021年の東京の風景をビッグスケールで展開する「パビリオン・トウキョウ2021」。全展示のコンプリートを目指して、東京の街を巡ってみてはいかがだろうか。

Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13
パビリオン・トウキョウ 2021
開催時期|2021年7月1日(木)~9月5日(日)
鑑賞時間|各パビリオンごとに異なるため、最新情報を公式サイトにて確認ください。
※一部のパビリオンには休館日あり。また、入場料や事前予約が必要な会場があるため注意。
会場|新国立競技場周辺エリアを中心に東京都内各所
パビリオン・クリエイター|藤森照信、妹島和世、藤本壮介、石上純也、平田晃久、藤原徹平、会田誠、草間彌生
特別参加|真鍋大度 + Rhizomatiks
主催|東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、パビリオン・トウキョウ2021実行委員会
企画|ワタリウム美術館
公式サイト|https://paviliontokyo.jp/

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