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セメントプロデュースデザイン・金谷 勉さんが語る「大堀相馬焼に見る、工芸の未来」

2020.12.20
セメントプロデュースデザイン・金谷 勉さんが語る「大堀相馬焼に見る、工芸の未来」
金谷 勉さんによるプロデュースの大堀相馬焼

2020年11月3日(火・祝)~15日(日)、「コトモノミチ at TOKYO」にて開催された大堀相馬焼のPOPUPイベント「ひびのもよう」。イベントをプロデュースしたセメントプロデュースデザイン代表/クリエイティブディレクターの金谷 勉さんに、「ひびのもよう」の振り返りとともに、窯元や工芸の未来について、お話を伺いました。

イベント記事こちら
コトモノミチ at Tokyoにて、大堀相馬焼『ひびのもよう』を開催

金谷 勉(かなや・つとむ)
1999年にデザイン会社「セメントプロデュースデザイン」を設立。大阪・東京・京都を中心に企業や商業施設やメーカーのグラフィック、WEB、プロダクトデザインなどを手掛ける。2011年から、全国各地での商品開発プロジェクト「みんなの地域産業協業活動」をはじめ、500を超える工場や職人との情報連携を進める。職人達の技術を学び、伝える場「コトモノミチat TOKYO」を東京墨田区に展開。京都精華大学、金沢美術工芸大学講師を務める。近著に『小さな企業が生き残る』(日経BP社)

挑戦へのヒントは、
ものづくりの現場にある

イベントで製作されたポスタービジュアル

「ひびのもよう」では、4つの窯元より個性を生かした新商品が発表され、そのプロデュースを金谷さんが行った。期間中に開催されたオンライントークでは、「現場の見える化」により新しいイベントのかたちが見えたという。

「大堀相馬焼」は、その特徴の一つである“ひび割れ貫入”(※1)という伝統的な技法をもち、民窯として栄えたルーツがある。二重焼き構造のため、入れたお湯は冷めにくく、熱い湯を注いでもうつわが熱くなりにくいという特性がある。また、旧相馬藩の「御神馬」が描かれており、別名「左馬」それは「右に出るものはない」という意味から縁起がいいとして地域で親しまれてきた。

(※1)ひび割れ貫入とは、素材と釉薬との収縮率のちがいから、焼いたときの陶器の表面に繊細な音を伴って細かい亀裂が入ること。

あさか野窯にて打ち合わせをする様子

ものづくりをされている方との取り組みで心掛けていることは「アクセルを踏むこと」と話す金谷さん。その理由を伺った。

「作家さんとの仕事において僕たちの役割は、より可能性を広げることだと思っています。既存の価値をよりブラッシュアップさせるために、挑戦のきっかけをつくる役割ですね。そのヒントを探すため、毎回、工房や作業場を見学させてもらうんです。そこで、作家さんが『これは試作品なんです』とか『個人の趣味でつくったものです』なんておっしゃることがよくある。でも、実はそれが僕らにとってピンとくるものだったりするんですね。つくり手の『やってみたい』という思いが潜んでいるからこそ、可能性を感じる。だから、ここでアクセルを踏んでみませんか? という投げかけにつながるのです。大堀相馬焼の窯元さんとも、そんなやり取りからスタートしました」

イベントに向けて作陶した作品。右から、あさか野窯、いかりや商店、陶徳窯、京月窯

「4つの窯元さんは、短期間でのオーダーにもかかわらず、柔軟に対応してくださり、新しいかたちの作品を生み出してくれました。難しいとされる貫入の釉薬の掛分けや、穴をあけない二重焼など、それぞれが得意とするところをより個性として引き出してくれました。よく言われることですが、伝承は技法、技術を継承すること。伝統は技と形を継承するだけでなく、新しいことを積み重ねること。伝承と伝統には違いがあると思うのです。

たとえば、仏壇は、伝統技術が集結した工芸品のひとつです。ただ、いまは生活様式の変化にともない仏壇をもたない家も増えています。そんな中、技術を残すためには、技法、技術を大切にしながら、どう残すかを考える必要があるわけです。大堀相馬焼は、生活のうつわとして江戸時代に浪江町で生まれ320年以上も伝わってきた歴史があります。ここまで続いてきた理由には、その時代のニーズに応えてきたという伝統があるからだと感じています。そして、これからは工芸の技術の先を作ることが、より大事になっていくと思います。伝統工芸の良さを残しつつ、いまに馴染むものづくりを応援していきたいです」

オンラインで「見える化」した
トークイベントのかたち

トークセッションでは陶徳(すえとく)窯のギャラリーの様子が伝えられた

コロナ禍となった2020年。箱を設けたイベントが軒並み中止となる中、各所でオンライン化が進みました。大堀相馬焼のイベント開催期間中に行われたオンライントークも、イベント会場である「コトモノミチ at TOKYO」と視聴者を繋ぎ、金谷さんと陶徳窯の陶正徳さんは陶徳窯の工房からトークセッションを行っていました。

「緊急事態宣言後、窯元さんたちとの打ち合わせをオンラインでやるようになり、その流れでイベントにもオンラインを取り入れています。今回のように現場から中継するメリットは、奥行きがでることだと実感しています。トーク中、陶さんのナビゲートで工房の2階にあるギャラリーも見せてもらいました。1点ものの食器類のほか、ランプシェードやアロマポットをお客さまに見てもらうことができました。投稿したコメントの返事をその場で陶正徳さん本人から聞けるというのも魅力だったと思います。さらに、イベントに合わせて『福島の音30選』にも選ばれている貫入音(ひび割れが入る音)を使った音源も作成し、イベント会場で流していました。ヒーリングミュージックのような仕上がりに、窯元の皆さんも驚いていましたね。窯元の皆さんからすると、日常にある当たり前の音が音楽となって人の耳に届く。新しいかたちで工芸を伝えることが実感できたと思います。つながるきっかけはたくさんあった方が良いと思います。広い面で人と場、モノがつながっていくことが、工芸の未来につながる要素だと信じています」

工芸をはじめとする日本のものづくりへエールを送り続けている金谷さん。「ひびのもよう」では、手応えとともに、大堀相馬焼の伸び代を感じたと楽しそうに語ってくれた。工芸の未来を見据えた挑戦に、今後も注目したい。

大堀相馬焼のPOPUPが、1月に大阪でも開催!
https://store.coto-mono-michi.jp/?tid=21&mode=f18

大堀相馬焼は、福島県双葉町浪江町発祥。東日本大震災により、浪江町全域が帰宅困難区域と指定され、窯元は営業停止を余儀なくされた。現在は、県内外の新天地で窯を再建

text: Mayuko Kimura


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