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京都国立博物館で特別展が開催中
今こそ知りたい、茶の湯の歴史【中編】

2022.11.23
<small>京都国立博物館で特別展が開催中</small><br>今こそ知りたい、茶の湯の歴史【中編】

現在、京都国立博物館では特別展「京に生きる文化 茶の湯」が開催中。その見どころを交えて、1000年以上にわたって京都で守り継がれる茶の湯の文化の変遷をたどります。

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広く庶民も楽しむ文化に

鎌倉時代の後半以降、茶の栽培は宇治をはじめ各地で盛んになり、茶の湯は庶民にも急速に広まっていくことになる。それを裏付けるのが、神社や寺院の門前の茶屋で、茶が振る舞われる様子を描いた絵図の数々だ。安土桃山時代に入ると、茶屋は「阿国歌舞伎」などの芝居小屋の周囲や、市の立つところなど人々が寄り集う場所に続々とできていく。柱と屋根を持ち運んで出店する茶屋では、茶とともに餅や団子なども供したようだ。一方、天秤棒で風炉(湯を炭火で沸かすための可動式の炉)と釜、水や茶碗など茶道具一式を担いで移動する茶売りも登場する。絵図の中の茶売りは、立ったまま左手に茶碗をのせ、右手で茶筅を振る姿で描かれることが多く、供されたのが、いわゆる抹茶であることがわかる。茶の湯は屋内のみならず、野外でも楽しめる存在となり、その魅力は広く町人層にも伝わっていく。こうした茶の湯の広がりが、その後のわび茶の隆盛をもたらす背景ともなった。

国宝『観楓図屛風』 狩野秀頼筆 東京国立博物館(画像提供:東京国立博物館)

紅葉の名所まで茶を移動販売
紅葉の名所、高雄を舞台に野外遊楽の様子を描いた図。飲食を楽しむ女性たちのかたわらに、室町時代になって登場した「一服一銭」と称される茶売りの姿が見える。天秤棒の一方には大きな風炉と釜が付けられ、もう一方の水桶の上の丸鉢には、青磁や白磁とおぼしき唐物茶碗が並んでいる

『珍皇寺参詣曼荼羅図』 京都・六道珍皇寺 〜12月4日展示

参拝のお供に欠かせなかった
餅や団子と茶

室町時代以降、社寺の門前には参詣客を接待する茶屋が建ち並んだ。上の図は平安京郊外、東山の葬送地・鳥辺野にある六道珍皇寺の、盂蘭盆(うらぼん)の精霊(しょうりょう)迎えの光景。門前の五条通(現在の松原通)にはいくつもの茶屋が並び、風炉で茶を供すさまが描かれている。茶とともに、炭火で炙った餅や団子なども参詣のお供となっていたようだ

<Column>
近世の喫茶を体感するなら
今宮神社に向かうべし!

今宮神社の門前で1000年以上接待を続ける茶屋「一文字屋和輔」。参詣客が愛し続けるその「あぶり餅」は、炭火で香ばしく炙ってほのかに甘い白味噌をからめた餅で、なんと千利休の茶菓になったこともあるそう

交流ツールとしての発展

室町時代以降、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった天下人をはじめ武将たちはこぞって茶の湯に入れ込んだ。その理由はまず公家、僧侶、商人らあらゆる階層が親しんだ茶の湯が、もはや交流のツールとして欠かせないものになっていたこと、また茶室という特別な空間が親密な対話の場になったことが挙げられるだろう。そして主君から家来への褒美として、唐物などの貴重な茶道具を与えることも盛んになっていく。室町将軍家が有した唐物「東山御物」に茶道具が多く含まれており、格の高い唐物を用いて茶の湯を行うことが、武家の権威づけに直結していった。

重要文化財『大井戸茶碗 銘 筒井筒』 通期展示

家来が割って秀吉大激怒。
しかし歌のパロディで茶会が和んだ!?

『大井戸茶碗 銘 筒井筒』は豊臣秀吉が愛蔵した茶碗だが、ある茶会(一説には北野大茶湯)で秀吉の近習(きんじゅう)が誤って割ってしまう。烈火のごとく怒った秀吉を、細川幽斎が『伊勢物語』の中の歌を引用して狂歌を即興してその場を取りなし、この事から「筒井筒」の銘がついたと伝えられる

重要文化財『豊臣秀吉像』 玄圃霊三・惟杏永哲賛
滋賀・西教寺 前期展示
重要文化財『千利休像』(部分) 伝長谷川等伯筆/古渓宗陳賛
大阪・正木美術館 後期展示

名プロデューサーと茶の湯マニアの
切っても切れない関係性

秀吉は信長に名物の茶道具を与えられた頃から茶の湯にのめり込む。千利休を茶頭に据え、信長がはじめた政策「名器狩り」を行って名物の茶道具を集め、手柄を立てた家臣に名物を与えるという「茶の湯御政道」を推し進めた。「黄金の茶室」はそんな為政者たる秀吉に合う空間を、側近として活躍した利休がプロデュースしつくったと考えられている

『北野大茶湯図』 浮田一蕙筆 京都・北野天満宮 〜11月27日展示

まるで万博!? 300席以上の茶席が並ぶ
秀吉主催の大茶会

1587(天正15)年10月に秀吉が北野天満宮で催した茶会「北野大茶湯」を江戸時代後期に描いた想像図。当日は茶の湯を志す人なら誰でも参加でき、秀吉や利休らによる四席のほか趣向を凝らした300を超える茶席が設けられ、1日で800人以上が訪れたという

<Column>
北野天満宮の献茶祭で
400年前にタイムスリップ気分

「北野大茶湯」にちなみ、北野天満宮では毎年12月1日に献茶祭を実施。11月26日の御茶壺奉献奉告祭・口切式で奉納された茶を神前に献茶。境内や上七軒に茶席が設けられ、上七軒では舞妓の点てた茶が楽しめる

 

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text: Kaori Nagano(Arika Inc.)
Discover Japan 2022年11月号「京都を味わう旅へ」

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