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京都国立博物館で特別展が開催中
今こそ知りたい、茶の湯の歴史【前編】

2022.11.23
<small>京都国立博物館で特別展が開催中</small><br>今こそ知りたい、茶の湯の歴史【前編】

現在、京都国立博物館では特別展「京に生きる文化 茶の湯」が開催中。その見どころを交えて、1000年以上にわたって京都で守り継がれる茶の湯の文化の変遷をたどります。

まず押さえたい!
茶の湯文化をつくったキーパーソン

明庵栄西
鎌倉前期の臨済宗の僧。宋に渡り、禅を学び帰国。2代将軍・源頼家の支援を得て京都に建仁寺を開く。国内初の茶書『喫茶養生記』で茶の薬効を説いた

豊臣秀吉
織田信長の没後天下統一を果たす。千利休らに学んで茶の湯に傾倒。移動可能な組立式「黄金の茶室」をつくらせ、禁中茶会や北野大茶湯を盛大に開いた

珠光
室町中期の茶人でわび茶の始祖。大徳寺の一休宗純に教えを受け、禅に親しみつつ日常の中から道具を見出し取り合わせる「数寄」の工夫に取り組んだ

古田織部
安土桃山時代の武将で、千利休の弟子の一人。利休に次ぐ「茶の湯の名人」と称され諸大名に茶の湯を伝授。豪快な姿の茶道具を好み、門弟に小堀遠州など

千利休
安土桃山時代の茶人でわび茶を大成。織田信長、豊臣秀吉の茶頭を務め、新しい茶の湯道具や草庵風の茶室様式を発案。多くの優れた弟子も育てた

小堀遠州
江戸幕府2代将軍・徳川秀忠、3代・家光に仕えた江戸初期の大名で茶人。王朝美を踏まえた茶風は「綺麗さび」と称される。各地で茶陶の指導も行った

日本で“喫茶”がはじまる

そもそも日本に中国から茶がもたらされたのは奈良時代ともいわれ、当時は発酵した茶葉を固めた「団茶」を削り、煮出して飲んでいた。茶の湯の原形が渡来僧や入唐僧によって、多くの文物とともにもたらされるのは平安末から鎌倉時代。伝来した宋代の「点茶法」は現代の抹茶に近く、碾茶(てんちゃ)を細かい粉末にして茶碗に入れ、湯を注いで攪拌して飲むスタイルだった。茶葉を挽く茶臼も輸入され、寺院を中心に眠気覚ましや滋養強壮によいものとして飲まれた。そして禅僧・栄西が茶の飲み方や効用を『喫茶養生記』にまとめあげ、武家にもその魅力が知られることとなる。

『喫茶養生記』断簡 京都・建仁寺 通期展示

中国留学で禅を学んだ栄西、
“薬としての茶”を日本に紹介

栄西は宋に二度渡航し、禅とともにさまざまな文化を日本に紹介。『喫茶養生記』は「茶は養生の煎薬なり。延齢の妙術なり」と栄西が茶の医学的効能や喫茶の準備の仕方などを記した書で、上下二巻からなる。鎌倉幕府3代将軍・源実朝が二日酔いの際には一碗の茶(抹茶)を奉じ、この書を贈ったという。写真は最古の写本の下巻部分で、後半に喫茶の方法が記されている

画像提供=建仁寺

茶の湯の原形は椅子に座るものだった!?
禅宗寺院では一日の合間にいっせいに茶を飲む「茶礼(されい)」が広まった。食後に茶を喫する形式は後の茶事にも通じ、次第に修行の場以外でも茶が飲まれることにつながった。中国風の喫茶法は椅子に座って飲むスタイル。大徳寺蔵『五百羅漢図』からも、そうした喫茶の情景をうかがうことができる。建仁寺では近年、当初の形式を想像し「四頭(よつがしら)茶礼」を立礼式で行うようになった

<Column>
栄西の誕生日に
毎年開催される建仁寺の茶会

4月20日、栄西の誕生日に行われる「四頭茶会」では4名の正客と相伴客が定められた作法でもてなされる。給仕役の僧が正客には膝立ちで、相伴客には中腰でおのおのの碗に湯を注ぎ、茶を点ててくれる。一般参加も可能

唐物を所有し
愛でることが地位の象徴

南北朝末期から室町時代にかけ、茶の湯は仏教寺院にとどまらず、“もの”を複数人で鑑賞し愛でる空間で楽しまれるようになっていく。歌会をはじめ各種の寄り合いが行われた武家の「会所」にはさまざまな道具が飾られ、茶を飲みながらそれらを愛でた。やがて座敷に「床(とこ)」が設けられると、そこに絵や書を軸装した掛物(かけもの)や道具を飾り、見せるようになる。お客は茶を飲む前に、まず「床を拝見」という文化の誕生だ。これが、後の茶室の床につながっていく。床飾りに尊ばれたのは、中国からの舶来品「唐物」。格付けされた唐物の名品をもつことは、ステータスとなっていく。

『君台観左右帳記』(部分) 東北大学附属図書館 通期展示 ※巻替あり

床飾りはステータスシンボル!
武家たちに伝えられたスタイルブック

室町幕府の将軍に仕え、唐物を管理した同朋衆(どうぼうしゅう)が編んだ『君台観左右帳記(くんたいかんそうちょうき)』は、唐物の格付けをし、床飾りの仕方を細かく記したいわばスタイルブック。中国の宋・元の画家177名を取り上げて上・中・下に分類、茶道具の評価も詳細に行い、たとえば天目茶碗なら一番が『曜変天目』、次に『油滴天目』などとランクづけた。武家は皆これを書き写して揃えるべき道具を学び、室礼のマニュアルとした。その評価は現代まで影響を与え続けている

 

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text: Kaori Nagano(Arika Inc.)
Discover Japan 2022年11月号「京都を味わう旅へ」

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