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今年注目の「奥能登国際芸術祭」〜後編「キリコとヨバレ」

date2017.03.15

今秋、石川県珠洲市を舞台に初開催となる「奥能登国際芸術祭」を前に、奥能登、そして珠洲の魅力を前編・後編の2回に分けてお届け。後編では奥能登最大のお祭り「キリコ祭り」と「ヨバレ」について紹介します。

奥能登が一年で一番熱くなる「キリコ祭り」

7月から10月にかけて能登半島の約200地区で行われる「能登のキリコ祭り」。この時期に能登を歩けば必ずキリコ祭りと出合うと言っていいほど、奥能登が一年で一番熱くなる4ヵ月です。

 

キリコ(切籠)と呼ばれる巨大な切子灯籠(きりことうろう)を担ぐお祭りで、その高さは、数メートルから、電線を超えるような数十メートルの大きさまで、地域によってさまざま。中には重さ4tを超える巨大なキリコもあります。江戸時代に疫病退散を願ったことからはじまったとされるキリコ祭りは、2014年春に、文化庁が定めた日本遺産※に認定され、いまでは県外の観光客に加え、海外からも注目を集めています。

 

※日本遺産とは

地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として文化庁が認定するもの。ストーリーを語る上で欠かせない魅力溢れる有形や無形の様々な文化財群を,地域が主体となって総合的に整備・活用し,国内だけでなく海外へも戦略的に発信していくことにより,地域の活性化を図ることを目的としている。

 

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「祭りが終わった次の日から、来年のキリコのことを考えるね。心の支えって言ったら大げさかもしれないけど、なくちゃならないものだよ。」キリコ祭りで出会った町の人たちの話を聞いて改めて思うのは、町の人の生活に神や仏、自然が密接につながっていること。ライフスタイルが劇的に変化した現代においても、その繋がりは強く残っています。これこそが、奥能登=「祭りの国」と呼ばれる所以ですね。

正月のように大切なもの。この日のために里帰りします

夕暮れ前の午後3時すぎ。静かな時間が流れる珠洲の町がにぎわいだし、西陽に照らされながら、はっぴ姿の男の人たちが続々と神社に集まってきました。通りには、そんな男たちを見守る町の人々の姿も。

 

「孫たちはね、毎年東京からこの祭りのために帰ってくるのよ。正月みたいでしょ。それがまた楽しみでね。」と嬉しそうに話してくれたおばあちゃん。奥能登では、多くの若者がキリコ祭りのためにこの時期に帰省しています。「祭りのために里帰り」。こうして、奥能登の文化のバトンは次の世代へと確実に繋がれているのです。

 

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もうひとつの楽しみ「ヨバレ」とは?

キリコ祭りには、忘れてはいけないもうひとつの楽しみがあります。漆の塗りの御膳に、赤飯、昆布巻き、団子汁と、溢れんばかりのごちそうがずらり。これが奥能登の祭りのごっつぉ(ごちそう)です。そしてこのごっつぉでたくさんのお客さんをもてなす会が、「ヨバレ」というもうひとつの祭り。夏から秋にかけて行われるキリコ祭りにあわせ、親戚や職場の仲間など、日頃お世話になっている人々を家に招き、ごちそうを振る舞います。祭りに招かれる(呼ばれる)ことから、いつしかごっつぉでもてなされることを「ヨバレ」というようになったそう。

お母さんたちの腕の見せ所

「今年はどんなごっつぉにしようかなと、一年中ヨバレのことを考えていますよ」そう語るのは、上戸食文化研究会のお母さんたち。昔からヨバレのごっつぉは、各家庭のお母さんたちが春から食材を準備してつくる、渾身の作でした。地域や家庭ごとに材料や調理法も少しずつ違い、この上戸地区では大きな昆布巻が特徴。その土地の個性を楽しむのもごっつぉの魅力です。

 

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「当日何人来るのかは正確には分からないのよね。多いところは40人近く。ヨバレのはしごは普通だから、ひょっこりやってくる人がいてもいいように、多めにつくっているの」手際よく漆の椀を並べながら、お母さんたちはせっせとごっつぉの支度です。一番忙しいはずなのに、どこか楽しそうなのが印象的でした。

キリコに灯りがともり、祭も本番です

午後7時。空の色がだんだん濃い青へ変わっていき、日が暮れはじめると、ぽつりぽつりと、キリコに灯りがともります。ここからが、キリコ祭りの真骨頂。氏子が一斉にキリコを担ぎ町内を練り歩き、太鼓とすずの音、そして男たちの掛け声が町の通りにこだまします。

灯りがともされた提灯が「ヨバレやってます」の目印!

キリコに続いて町内を練り歩いていると、度々目にするのが、この灯りのついた提灯。これは「うちでもヨバレをやっていますよ」という意味で、招待客の目印になっています。この日は、米澤さんのお宅でヨバレを体験。立派な門構えに圧倒されつつ奥に入ると、旅館のように広い客間で、ヨバレがはじまっていました。

親戚、ご近所、友人も、そのまた友人も大集合

お客さんの多くは、親戚や、近所の方、職場の仲間や、学校の友人などいつもお世話に成っている人たち。各家の主人が一人ひとりに声をかけ、招待客をもてなします。この日は、ヨバレ初体験の若者や海外からの留学生もいて、少し緊張した表情で、近所のおじさんたちの話を真剣に聞いていました。様々な世代が一堂に会すその様子は、まるでお正月やお盆の親戚の集まりのようでした。

 

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祭りの国・珠洲から生まれる奥能登国際芸術祭

日本列島のさいはてとまで言われた、奥能登・珠洲は、いまもこうしたカルチャーが息づく、ニッポン文化の源流であり、生粋の祭りの国でした。そんな珠洲で9月から開催される「奥能登国際芸術祭2017」。「最涯の日本、最涯の芸術祭」をテーマに、伝統文化と最先端な芸術が珠洲の町を彩ります。

 

さらに開催に先駆け、奥能登の魅力を発信するフリーペーパー「おくノート」も発行中! 「わるないわ~奥能登珠洲」と題した写真コンテストを企画するなど、奥能登の魅力を再発見してもらうための参加型プロジェクトとして、ウェブサイトでも芸術祭情報を更新しています。芸術祭の予習にこちらも必見ですね。

 

【開催概要】

奥能登国際芸術祭2017

「最涯の芸術祭、最先端の美術」

会期:2017年9月3日(日)~10月22日(日)

会場:石川県珠洲市全域

参加作家:10の国と地域から31組(2017年2月19日時点)

主催:奥能登国際芸術祭実行委員会

実行委員長:泉谷満寿裕(珠洲市長)

総合ディレクター:北川フラム

http://oku-noto.jp

(編集M)

 

今年注目の「奥能登国際芸術祭」
前編「能登杜氏」はこちらから

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