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お菓子研究家・福田里香がめぐる 幻の菓子が生まれたフィランド/長崎・平戸

date2016.12.09

「フィランド」とは17世紀の世界地図に記載された平戸のこと。南蛮の人々は平戸のことをこう発音したのだという。なんだか可愛らしい。西欧貿易を機に独特の菓子文化を育んだこの地を、お菓子研究家・福田里香さんが訪れた。

ふくだ・りか

福岡県生まれ。’85 年武蔵野美術大学卒業。新宿高野に勤務後独立。お菓子研究家として雑誌や書籍を中心に広く活躍。近著に『フードを包む』(柴田書店)など著書多数

まずは平戸の歴史を振り返りましょう

古来より、近隣諸国との交流を重ねてきた長崎・平戸。1542年に中国人海商・王直が拠点を構えた頃には、ポルトガル商船が入港したことで、〝西の都〞と呼ばれるほどに繁栄。王直の手引きにより、平戸は西欧貿易港としていっそうの栄華を極めていく。

1598年、オランダでは銀の産出国・日本を目指し、5隻の船団が出航したが、リーフデ号のみが豊後国(大分県臼杵市)に漂着。1609年には連合東インド会社が平戸オランダ商館を開設し、日本とオランダとの交易が幕を開けた。輸入品の中心は生糸だが、南蛮菓子を知った日本人は、白砂糖の取り引きを多く行った。この史実は現代の平戸のみならず、九州各地の菓子文化にも多大な影響を与えているという。

フィランドで起きたニッポンの菓子革命

貿易拠点であった平戸オランダ商館は、幕府の鎖国政策や島原の乱などを受け、1641年に長崎・出島に移転。だが、その後も平戸の菓子文化は進化し続けた。4代藩主・松浦鎮信は茶道鎮信流の発展に、10代藩主・松浦熈(ひろむ)は菓子文化の育成に力を注いだ。また、松浦熈は100種類の菓子づくりを平戸城下の菓子舗、蔦屋と堺屋に指示し、その菓子の絵図と製法を記した『百菓之図』の編纂を命じた。書物の中には現代に伝わる菓子も数多く描かれており、この黄金色に輝く菓子「カスドース」がそのひとつだ。

平戸が誇る伝統菓子、カスドースができるまで

今回取材した、平戸蔦屋では江戸時代から、製法はほぼ変えずにすべて手作業でカスドースをつくり続けているという。そのつくり方は、とてもシンプル。ひと口サイズに切られたカステラが、順番に卵黄をくぐり、蜜煮され、仕上げに砂糖をまぶされる。その姿を眺めていると、つい無言で見入ってしまう。

 

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お菓子はタイムマシーン

こうした甘い菓子を食べる風習や、卵・小麦粉・油を使用する料理法は、いまでさえ日常になったものの、すべてのはじまりは、ここ平戸に降り立った、南蛮の人々だった。

 

「お菓子はタイムマシーン。味を通じ、過去に連れて行ってくれるのですから。『百菓之図』はきっと熈公から未来への贈り物。お殿さまが嗜んだカスドース、庶民が味わった牛蒡餅、駄菓子のようなオランダ焼など、用途に応じたお菓子が揃っていることも、平戸の菓子文化の魅力だと思います」

 

そう話す福田さんも、今回の旅を通じ南蛮菓子のルーツを再確認できたとか。当時、『百菓之図』

に記す菓子づくりを命じられた「平戸蔦屋」。その24代目・松尾俊行さんは「菓子はその土地の文化を象徴している」と語る。こうして、平戸の菓子文化は育まれていったのだった。

 

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平戸蔦屋

住所:長崎県平戸市木引田町431(按針の館)

Tel:0950-23-8000

営業時間:9:00 ~19:00

そんな平戸の文化を東京で!

現在、東京・新丸ビル7階「丸の内ハウス」で開催されている「FIRANDO 1609」はそんな平戸とオランダとのかかわりを、さまざまな側面から体感できるイベントだ。フロア内にある9つのレストランやバーでは、平戸の特産品を使用したスペシャルメニューを提供。「平戸の今と昔」をテーマとしたライブラリーでの展示やトークショーなど、充実した内容となっている。期間中に開催される5つのトークショーでは、平戸の菓子文化をはじめ、移住などライフスタイルに関するテーマで平戸の魅力をお届け。この機会にぜひお越しください。

 

 

FIRANDO 1609 ~400年前の平戸から はじまった日蘭交流~

開催日:2016年12月5日(月) ~ 16日(金)

場所:(marunouchi)HOUSE 住所:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸ビル7F

営業時間:11:00 ~ 翌4:00(日曜、祝日、連休最終日 ~ 23:00)

お問い合わせ:丸の内コールセンター
Tel
03-5218-5100(受付時間:11:00 21:00、日曜、祝日、連休最終日 20:00

 

詳しくは、こちら。みなさまのお越しをお待ちしております!

 

( text: Nao Ohmori, photo: Atsushi Yamahira )

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