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気分やシチュエーションで選ぶ、どっちの温泉に行きまショー!?

2019.1.15
気分やシチュエーションで選ぶ、どっちの温泉に行きまショー!?

行きたい温泉は人それぞれ、しかもそのときによってころころ変わる。人生それでいいのだ。だからこそ、満足できる旅がしたい。失敗しない温泉選びにはテーマが重要だ。
日本全国3038カ所の温泉地から、温泉ビューティ研究家・石井宏子さんがおすすめの温泉をテーマ別に紹介。あなたの行きたい温泉が必ずあるはず。
さて、あなたはどっち!?

温泉ビューティ研究家・石井宏子さん
旅行作家・温泉ビューティ研究家。毎年200日、国内外の温泉や大自然を旅して執筆する。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究。最新著「感動の温泉宿100」(文藝春秋)

テーマ① 絶景 「雪」or「海」?

【雪】やっぱり冬は雪見温泉でしょ!

しんしんと降る静寂の白い世界。雪はすべてを包み込み、冬の森はひっそりと呼吸をしている。雪降る露天風呂で首まですっぽりと温泉に浸かり、落ちては消える雪の粒を眺めていたい。冬にしか行けない幸せの特等席、それは雪見の絶景温泉だ。

新潟県・赤倉温泉「赤倉観光ホテル」

視線を遮るものが一切ない天空の絶景温泉はこの宿でしか成し得なかった。連なる雪の山々から昇る朝陽や雲海も感動的。大浴場の露天風呂からも部屋の温泉からも絶景を見渡せる。湧き水をアクアファサードにして空や景色を映し出す設計が見事だ。ホテルからそのままスキーも可能。
●ここに注目!
日の出前に温泉へ。刻々と変わる空の色とご来光、ときには雲海と雪景色が眺められる。

【DATA】
温泉・露天・客室温泉・おひとり・宿泊
泉質:カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉
泉温:50.2℃
加温:あり(季節による)
加水:あり(季節による)
かけ流し:○

住所:新潟県妙高市田切216
Tel:0255-87-2501
料金:1泊2食付2万4000円~(税・サ別)
アクセス:車/上信越自動車道妙高高原ICから約10分
電車/しなの鉄道・えちごトキめき鉄道妙高高原駅から無料送迎あり(要予約)
http://www.akr-hotel.com

【海】海を眺めてぼんやりしたい

ふと、海が見たいと思うことがある。それは、いわば生きていくための大切な栄養補給だ。海洋性ミネラルが欠乏すると人はキレやすくなる。波間に漂う気分でぷかぷかと温泉に浸かり、潮風を浴びて海温泉で元気をチャージしよう。

青森県・下黄金崎温泉「黄金崎不老ふ死温泉」

本州の北の果て、日本海の大海原が目の前の絶景露天風呂は、開放感抜群。温泉に入っていると波しぶきがかかりそうなほど海が近い。新館大浴場・不老ふ死の湯にもパノラマ展望風呂があり、高台から海を見渡す絶景も楽しめる。アワビ陶板焼付きのお料理アッププランがおすすめ。
●ここに注目!
ミネラルたっぷりの温泉は、鉄分も塩分も大変濃厚。炭酸ガスも含有し、爆発的に発汗する。

【DATA】
温泉・露天・おひとり・宿泊・日帰り
泉質:ナトリウム塩化物強塩泉
泉温:52.2℃
加温:なし
加水:あり
かけ流し:○

住所:青森県西津軽郡深浦町大字舮作字下清滝15-1
Tel:0173-74-3500
料金:1泊2 食付1万410円~(税・サ込、入湯税別)
アクセス:車/東北自動車道浪岡ICから約1時間40分
電車/ JRウェスパ椿山駅から無料送迎あり(要予約)
http://www.furofushi.com

テーマ②湯温 「あつ湯」or「ぬる湯」

【あつ湯】ガツンと身体の芯まで温めたい

じんじんくるほど熱い湯が、にやりと笑って待ち構えている。地元の人はいつものことだと、平然と湯に浸かる。同じ人間なんだから、入れないはずはない。鉄則はかけ湯十杯。湯船の湯を桶にくんで、ざぶんざぶんと浴びて、いざ出陣。

長野県・野沢温泉「野沢温泉 村のホテル 住吉屋」

硫黄で血行促進、硫酸塩泉で保湿。野沢温泉は美と健康が凝縮している。外湯めぐりであつ湯巡礼をするもよし、宿でまったり過ごすもよし。冬でも地元食材を美味しく食べる知恵が詰まった、郷土料理の取り回し鉢と会席料理の二本立てはこの宿だけの楽しみ。
●ここに注目!
右側に祀られている温泉の神様のすぐ下が源泉で新鮮さが際立つ極上湯。露天風呂もある。

【DATA】
温泉・露天・おひとり(要相談)・宿泊
泉質:ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩泉
泉温:89.0℃
加温:あり
加水:なし
かけ流し:○

住所:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷8713
Tel:0269-85-2005
料金:1泊2食付1万6500円~(税・サ別)
アクセス:車/上信越自動車道豊田飯山IC から30 分
電車/ JR飯山駅からバスで25分、野沢温泉から徒歩約5分
https://sumiyosiya.co.jp

【ぬる湯】やさしく癒されてふやけたい

いったいどのくらいの時間が経ったのだろうか。あまりの気持ちよさに、うとうとしてしまった。自分の身体と温泉の境界線がわからなくなり、透明人間になった気分だ。時空を超えるぬる湯は、自分の中の時計の針もゆっくりと動いていく。

新潟県・栃尾又温泉「宝巌堂」

3軒ある宿のひとつ。若女将が考える野菜料理がとにかく絶品だ。冬は越後もち豚のしゃぶ鍋で地酒の緑川をくいっと。脳みそまでふやけるほど温泉で癒された後は魚沼のごちそうで元気を補給する。ラドン温泉の力か、ぐっすり熟睡して生きる力が湧いてくる。
●ここに注目!
放射能泉のラドンは気化しやすいので、ゆっくりと深い呼吸をして体内に取り込む。

【DATA】
温泉・おひとり・宿泊
泉質:単純放射能泉(ラジウム泉)
泉温:36.5℃
加温:なし
加水:なし
かけ流し:○

住所:新潟県魚沼市栃尾又温泉
Tel:025-795-2216
料金:1泊2食付1万9590円~(税・サ込、入湯税別)
アクセス:車/関越自動車道小出IC から約25分
電車/ JR小出駅からバスで約35分、栃尾又温泉から徒歩すぐ
http://www.ho-gan-do.com

テーマ③建築 「モダン」or「レトロ」

【モダン】建築家の美空間で過ごしたい

日本各地に有名建築家が手掛けた温泉がある。温泉や宿がどのような建築なのかだけでなく、湯船に浸かったときに、湯煙の先に何が見えるのか、周りの風景の中から温泉はどう見えるのか。あらゆる角度で眺めていると何倍も楽しめる。

山形県「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」

山形庄内の交流と滞在の拠点がテーマの宿。折板構造のギザギザ屋根の共用棟にはレストランやショップ、1000 冊のライブラリーがあり外来利用も可能。宿泊棟へはガラス張りのブリッジでつながっている。トラス構造のドーム型の建物に地下1200mから掘削した温泉とフィットネスがあり宿泊者と会員のみ利用可能だ。
●建築について
坂茂氏設計の温泉ホテル。水を張った田んぼに浮かんでいるようなシースルーの建物。水盤は空と風景を映し庄内の田園風景へつながる。曲線が美しい半露天風呂の温泉は、湯に浸かると目線の先に水田、見上げれば木造トラス状の建築を楽しめる。壁はモザイクタイルが印象的だ。

【DATA】
温泉・露天・客室温泉・おひとり・宿泊
泉質:ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
泉温:62.0℃
加温:なし
加水:なし
かけ流し:○

住所:山形県鶴岡市北京田字下鳥ノ巣23-1
Tel:予約050-1745-9721
料金:1泊朝食付8000円~(税別・サ込)
アクセス:車/山形自動車道鶴岡ICから約10分
電車/ JR鶴岡駅からタクシーで約10分
https://suiden-terrasse.yamagata-design.com

【レトロ】国の登録有形文化財に包まれたい

国の登録有形文化財は貴重な国民的財産だ。ずっと大切にしておきたい日本の宝物で温泉に入ることができる宿があるのだ。日本人はなんとおしゃれで粋だったか。ぷくぷくとささやく温泉と会話しながら、日本が世界に誇れる芸術を味わいたい。

群馬県・法師温泉「法師温泉 長寿館」

到着すると癒されてしまう光景に出合う。時が止まったような木造の玄関から笠を被った法被姿の番頭さんが雪の中を駆け寄ってくる。囲炉裏でお茶を飲み、磨き込まれた廊下を進む。1200 年以上も変わらずに湯船の底からぷくぷくと自噴する温泉に身をゆだね、丸太に頭をのせれば、湯とともに時を重ねる建築の息遣いが聞こえる。
●建築について
現在の法師乃湯は1895(明治28)年に建てられた。ラウンドトップの大窓が印象的な鹿鳴館様式で設計。源泉が自然湧出する湯船の底に玉石を敷き詰め、透明な湯には小さな湯玉が上がってくる。4つの浴槽を丸太で8つに仕切り、好みの湯温の場所で温泉を楽しめる。

【DATA】
温泉・露天・おひとり・宿泊
泉質:カルシウム・ナトリウム‐硫酸塩温泉
泉温:41.9℃ 加温:なし
加水:なし かけ流し:○

住所:群馬県利根郡みなかみ町永井650
Tel:0278-66-0005
料金:1泊2食付1万6350円~(税・サ込)
アクセス:車/関越自動車道月夜野ICから約40分
電車/ JR上毛高原駅からバスで約30分の猿ヶ京で町営バス(1日4便)に乗り換え、約20分の法師温泉から徒歩すぐ
http://www.hoshi-onsen.com

さて。あなたが、いますぐにでも行きたくなる温泉は、どっち!?

(text:Hiroko Ishii photo:Kei Sugimoto edit:Miyu Narita)
※この記事は2019年1月5日に発売したDiscover Japan2月号に掲載した記事の一部を抜粋しています

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