ARTS & CRAFTS

見ておきたい、ニッポンのミュージアム建築

2018.10.17
見ておきたい、ニッポンのミュージアム建築

美術館を訪れて、展示だけを見て帰ってしまう人も多いのでは?それではもったいない!美術館の“建築”を鑑賞のターゲットにすれば、より充実した美術館めぐりができること請け合いだ。
日本全国にたくさんある、建築も楽しめる美術館をご紹介。

【東北】土門拳記念館

建築家:谷口吉生
竣工年:1983年

戦後を代表する写真家・土門拳を顕彰する目的で、故郷の山形県酒田市に開館した写真専門の美術館。鳥海山を望める、市街地から離れた緑豊かな飯森山公園に建つ。谷口吉生が得意とするシンプルな箱型の建築で、コンセプトに据えたのは自然と建築の調和。手前に池を配し、背後の森を借景とする構成で、静かな雰囲気を創り出している。館内外に配置されたイサム・ノグチの彫刻や勅使河原宏(でしがわらひろし)による庭園も見どころ。

土門拳の写真約7 万点を収蔵。『古寺巡礼』、『室生寺』、『ヒロシマ』、『筑豊のこどもたち』、『文楽』、『風貌』など、保存を図りつつ公開。

土門拳『室生寺金堂十二神将 (未神)頭部』1976年

■現在開催中の企画展
「かお かたち 土門拳のまなざし」
会期:~12月24日(月)

<DATA>
住所:山形県酒田市飯森山2-13(飯森山公園内)
時間:9:00~17:00 ※入場~16:30
休館:12月~3月の月曜、年末年始
料金:一般430円、学生210円、中学生以下無料
Tel:0234-31-0028
www.domonken-kinenkan.jp

【関東】東京都庭園美術館

建築家:宮内省内匠寮(権藤要吉)
竣工年:1933年

香淳(こうじゅん)皇后の叔父にあたる朝香宮鳩彦王(あさかのみややすひこおう)の邸宅として完成した、瀟洒な建物を美術館に転用。パリから発信されたばかりのアール・デコの粋を集めた装飾美が圧巻だ。フランス留学経験のある鳩彦王の趣味が結実している。建築設計は宮内省内匠寮の権藤要吉だが、主だった部屋の内装はアンリ・ラパンが手掛けている。正面玄関の女性像のガラスレリーフや大客室のシャンデリアは、ガラス工芸家、ルネ・ラリックの佳品。

ポール・ポワレ『ローブ』藤田真理子・ポール・ジュリアン・アレキサンダー蔵 Paul Poiret Robec1920 Mariko Fujita,Paul Alexander

【関東】東京都美術館

©Tokyo Metoroporitan Art Museum

建築家:前川國男
竣工年:1975年

1926(大正15)年、日本初の公立美術館として開館。れんがのように見える外壁は前川國男独自の「打込みタイル」工法によるもの。上野公園に溶け込むように高さを抑え、美術館を小さな都市に見立て、中央にメインとなる広場をつくり、展示を行う建物を自由に行き来できるようにした。前川は「美術館に来て美味しいものが食べられないなんてあり得ない」という言葉を残している。レストランの位置にもこだわった。

エドヴァルド・ムンク『叫び』1910年 オスロ市立ムンク美術館所蔵  ©Munchmuseet

■現在開催中の企画展
特別展「ムンク展―共鳴する魂の叫び」
会期:10月27日(土)~2019年1月20日(日)

<DATA>
住所:東京都台東区上野公園8-36
時間:9:30 ~17:30(金曜、11月1日、3日は~ 20:00) ※入室は閉館の30分前まで
休室:月曜(11月26日、12月10日、24日、1月14日は開室)、12月25日(火)、12月31日(月)、1月1日(火)、1月15日(火)
料金:一般1600円、大学生・専門学校生1300円、高校生800円、65歳以上1000円、中学生以下無料
Tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://munch2018.jp

■現在開催中の企画展
「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」
会期:~2019年1月14日(月)

<DATA>
住所:東京都港区白金台5-21-9
時間:10:00~18:00※入館~ 17:30
休館:第2・4水曜(祝日の場合は翌日休)、年末年始
料金:一般1200 円、大学生・専修・専門学校生960円、高中生・65歳以上600円
Tel:03-5777-8600(ハローダイヤル)
www.teien-art-museum.ne.jp

【中部】谷村美術館

建築家:村野藤吾
竣工年:1983年

石窟寺院のような佇まいをしたこの建築の前に立つと、ここが日本であることを忘れてしまいそうになる。館内は洞窟状で、天井が湾曲し、村野藤吾が個々の作品に合わせてつくり上げた空間だ。自然光と人工照明を組み合わせ、作品はもちろん来館者を包み込む優しさを感じる。竣工から35 年もの歳月が流れ、建物の外壁が黒ずんでいるが、これは村野が“砂漠の中の遺跡”を目指し、当初から意図した経年変化によるもの。

谷村美術館に隣接する玉翠園

■現在開催中の企画展
「玉翠園・谷村美術館 秋の庭園ライトアップ」
会期:11月9日(金)~ 11月18日(日)

<DATA>
住所:新潟県糸魚川市京ケ峰2-1-13
時間:9:00~16:30(ライトアップは17:00~19:30) ※入場は閉館の30分前まで
休館:12月~ 3月中旬の火曜(祝日の場合は翌日休)、12月29日~ 1月3日
料金:一般500円、高校生以下300円
Tel:025-552-9277(ガーデン・ミュージアム運営協議会)
www.gyokusuien.jp

【中部】豊田市美術館

建築家:谷口吉生
竣工年:1995年

挙母城(ころもじょう)があった高台に建ち、高低差を生かした構成が魅力。美術館正面に張られた水盤と、清潔感にあふれる乳白色のガラス、そして緑色をしたスレートを組み合わせた建築が目の前に迫ってくる。建築の軽やかさと薄さ、シンプルで明快な構成が緊張感を生んでいる。美術館建築の名手として国内外で評価の高い谷口吉生の最高傑作のひとつ。現在改修中だが、工事完了後にはクリムトの作品展を予定している。

グスタフ・クリムト『ユディトⅠ』1901年 ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館

■現在開催中の企画展
「クリムト展 ウィーンと日本1900」
会期:2019年7月23日(火)~10月14日(月)

<DATA>
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
時間:10:00~17:30
休館:月曜、年末年始※現在、改修のため、2019年5月31日(金)まで休館
料金:一般300円、大高生200円、中学生以下無料 ※常設展・企画展料金は展示ごとに異なる
Tel:0565-34-6610
www.museum.toyota.aichi.jp

【近畿】MIHO MUSEUM

建築家:I.M.ペイ
竣工年:1997年

ルーブル美術館の“ガラスのピラミッド”で知られるI.M. ペイの設計。中国の詩人・陶淵明(とうえんめい)の『桃花源記』に描かれた“桃源郷”をこの地につくり出そうという、壮大な計画によって建てられている。トンネルを抜け、吊り橋を渡った先に、入母屋(いりもや)風の屋根をもつ美術館が見えてくるアプローチも素晴らしい。建築を構成するフレームは、三角形を組み合わせたもの。幾何学的な造形を得意とするペイの作風が表れている。

益田鈍翁作 茶杓 歌銘「年暮」1938(昭和13)年

■現在開催中の企画展
「秋季特別展Ⅱ 百(もも)の手すさび 近代の茶杓と数寄者往来」
会期:10月20日(土)~12月2日(日)

<DATA>
住所:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
時間:10:00~17:00※入場~16:00
休館:月曜(祝日の場合は翌平日休)、10月9日(火)~19日(金)、12月3日(月)~冬季休館
料金:一般1100 円、大高生800円、中学生以下300円
Tel:0748-82-3411
http://miho.jp

【四国・中国】大原美術館

建築家:薬師寺主計(本館)、浦辺鎮太郎(分館)
竣工年:1930年(本館)、1961年(分館)

事業家・大原孫三郎が、画家・児島虎次郎を記念して設立した日本初の西洋美術中心の私立美術館。ギリシャ神殿風の建築は倉敷美観地区の中心に建ち、地域の象徴となっている。鉄筋コンクリート造り2 階建てで、外観は石造りに見えるが、実はセメントを使った人造石仕上げだ。分館は倉敷で活躍した浦辺鎮太郎の設計。建物の高さは浦辺が倉敷に伝わる基準寸法から導いた“クラシキモジュール”によって決定した。

有隣荘内観

平成30年秋の有隣荘特別公開
三瀬夏之介 倣玉堂
会期:10月19日(金)~ 11月4日(日) ※会期中無休

<DATA>
住所:岡山県倉敷市中央1-1-15(大原美術館向かい)
時間:10:00 ~ 16:30(美術館は9:00 ~ 17:00) ※入場は閉館の30 分前まで
休館:月曜(祝日の場合は開館。7月下旬~ 8月と10月は無休)、年末 ※元日は本館のみ開館
料金:一般1300円、大学生800円、高校生以下500 円(有隣荘入場は一般1000 円、学生500 円)
Tel:086-422-0005
www.ohara.or.jp

【九州】大分県立美術館

建築家:坂 茂
竣工年:2014年

坂 茂が設計にあたって考えたテーマは、美術館に行かない人たちをいかに引き寄せ、そして美術を楽しんでもらい日常的に人々が集まる場をつくるか、だった。1階は外からも館内の様子がわかるガラス張りとし、無料で利用できる2層吹き抜けのアトリウム、そしてミュージアムショップとカフェを設け、日常的に利用できるようにした。南側のファサードは全面を開閉可能で、街と一体化した空間を創ることができる。

福田平八郎『花菖蒲』

■現在開催中の企画展
「日本モダンの精華 京都国立近代美術館コレクション」
会期:~10月21日(日)

<DATA>
住所:大分県大分市寿町2-1
時間:10:00~19:00( 金・土曜~ 20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館:なし
料金:一般800円、大高生500円、中学生以下無料
Tel:097-533-4500
www.opam.jp

(text: Takanori Yamauchi)

※この記事は2018年10月6日に発売したDiscover Japan11月号の記事を一部抜粋して掲載しています