TRAVEL

日本のミケランジェロ・石川雲蝶に会いに
越後、魚沼へ

2018.10.19
日本のミケランジェロ・石川雲蝶に会いに</br>越後、魚沼へ
雲蝶の代表作、 西福寺 開山堂の天井彫刻『道元禅師猛虎調伏の図』

日本有数の米処、越後の地に名工がいた。「日本のミケランジェロ」とたたえられる匠の名は石川雲蝶。江戸時代末期、木彫りや石彫りばかりでなく絵師としても、変わらぬ技量で絵画もこなした。マルチな才能で多くの作品が残る新潟県魚沼市へ旅に出た。

”彫りの鬼”石川雲蝶とは

酒好き、女好き、ばくち好き。そんな道楽者の一面をもつといわれるが、 ノミを握れば〝彫りの鬼〞と化す。石川雲蝶は1814年、江戸の雑司ヶ谷に生まれた彫工で、江戸彫の石川流に入門、20代で彫物師として名を馳せた。
雲蝶が越後へ拠点を移したのは30代 のはじめ頃。現在も金物のまちとして知られる新潟県三条の金物商、内山又蔵との出会いがきっかけだった。

「江戸に出向いた又蔵がのみの市でノミを 見つめていた雲蝶を見かけます。その目の鋭さに又蔵は『よい酒とノミを終 生与える』という条件を提示し、雲蝶は話にのりました」と曹洞宗、永林寺副住職の佐藤公彦さんは話す。

永林寺・本堂西側を飾る欄間 4の天女。「目細、鼻高、桜色」とされた 江戸の美人の条件に合ったモデル は、雲蝶が思いを寄せた魚沼の女性という

雲蝶作品が数多く残る新潟県内でも、 魚沼にはとりわけ大作が多い。永林寺には堂塔大工として迎えられるが、魚沼入りのエピソードもまたばくち好きの人物らしい。
「当時の住職、弁成和尚は『雲蝶が勝ったら堂の制作代金を支払い、和尚が勝ったら本堂いっぱいに全身全霊を込めた彫り物を無償で残してもらう』というもの。作品づくりを何より愛した雲蝶はわざと、和尚に負けたとも伝わっています」(副住職) 雲蝶は彫刻の出来が気に入らなければそれらを打ち捨てた。妥協を許さない匠の作品は永林寺に100を数える。

永林寺
住所:新潟県魚沼市根小屋 1765
http://eirinji.jp

雪深く貧しい村の心の拠りどころ

目玉にギヤマンをはめ込む烏天狗や鳳凰が躍動する西福寺・開山堂向拝彫刻。彩色のない作品は木目を生かした彫りが際立つ

「大龍和尚は雪深く貧しい農村地域の 人々の心のよりどころとなるよう、雲蝶に開山堂の彫刻や絵画の制作を依頼 したのです」と西福寺副住職の平澤龍彦さん。雲蝶は和尚の思いにその腕で見事にこたえた。
雲蝶は木彫りに限らず、石彫りや絵画もこなした。西福寺には襖絵や障子 などの作品も多く残り、多才さを見ることができる。これが「日本のミケランジェロ」とたたえられる由縁。魂を尽くしたノミさばき、筆さばきを堪能したい。

西福寺
住所:新潟県魚沼市大浦 174
www.saifukuji-k.com

雲蝶をめぐる魚沼の旅へ!

雲蝶の作品を堪能した後は、江戸時代の豪農の暮らしをいまに伝える目黒邸へ。 1797(寛政9)年に割元庄屋の役宅を兼ねて建てられた。母屋は桁行16間・梁間6間。正面の千鳥破風も壮麗だ。西福寺の開山堂は、この目黒邸と同クラスの大庄屋の寄進によってつくることができたという。

目黒邸
住所:新潟県魚沼市須原 892
www.city.uonuma.niigata.jp/megurotei

酒好きの雲蝶も惚れた新潟・魚沼は酒の産地。3mを超える積雪が当たり前の魚沼では雪を活用する利雪が盛んだ。「雪中貯蔵酒 大吟醸 越後ゆきくら」は冬に積もった 雪を山のように積んで天然の冷蔵庫をつくり、酒を熟成。酒蔵見学もできる。

玉川酒造/越後ゆきくら館
住所:新潟県魚沼市須原 1643
www.yukikura.com

魚沼でおすすめの店と宿

民家を改装した小さな食堂では、食 べられる野の花を中心に、摘み草や山菜など旬の魚沼産食材を使う田舎 料理を提供。店主、駒形博さんの丁寧な仕事で素朴な食材がごちそうに。

いろりじねん
住所:新潟県魚沼市上折立 718
http://irori-jinen.sakura.ne.jp

地域に唯一残された築 100 年以上になる農家を改装した1日1組限定の宿。宿泊をしながら、米づくりや山登り、 銀山平でのカヌー、メープルシロップの採集や、バスボムづくりなど、田舎暮らしのさまざまを体験するこができる。

手仕事手ほどき館
住所:新潟県魚沼市大栃山 183
www.welcome-uonuma.com/spot1184.html

栃尾又温泉で 400 年の歴史を刻む湯治の宿。泉質は「ラジウム温泉」で、万病に効くといわれている。36°Cの湯にはゆっくりと浸かるのがポイントで、 湯治のベテランの中には 1日10時間を浴槽で過ごす人もいるそう。

自在館
住所:新潟県魚沼市栃尾又温泉
www.jizaikan.jp

実りの秋に魚沼をめぐろう

国産米のトップブランド、魚沼産コシヒカリが黄金色に輝く地域

雪の多い地域では春から夏にかけて 長い期間、山菜が楽しめるという。積もった雪は一気には解けず、徐々に解 けて次々に山菜が芽吹く。山菜をはじめ、夏の川魚、秋にはキノコなど旬の食材は多い。そんな美味しさを詰め込 んだ「日本海美食旅(ガストロノミー)」 キャンペーンもはじまっている。

この秋は、日本有数の米処、魚沼産コシヒカリに代表される食の恵みと温泉を楽しみなから、雲蝶の作品をめぐりたい。
そのほかの観光情報は下記ウェブページでも紹介されているのでぜひチェックしてみて。

▶︎魚沼市観光協会
▶︎新潟県観光協会
▶︎新潟のつかいかた

 

text: Seika Mori photo: Kazuya Hayashi