ARTS & CRAFTS

【連れて帰りたい京都】「ちんぎれや」のがま口

2018.10.3
【連れて帰りたい京都】「ちんぎれや」のがま口

いまは何でも取り寄せて買える時代。でも、せっかく京都を訪れたなら足を運ばないと聞けないつくり手の話とともに買って帰りたい、京都ならではのいいものを厳選してご紹介。

貴人の愛した古裂(こぎれ)をそっと忍ばせて

いまでは財布といえば、革製のものが主流だろう。子どもの頃、祖母におやつをねだると、「これで買うてき」と、がま口から小銭を出してくれた。

私もはじめて使った財布はがま口だったが、気づけば革製の長財布の愛用者となった。でも小銭の出し入れには難儀する。50円玉と思いきや、100円玉だったり。もたついて諦める。結果、さらに小銭がやって来て、長財布はいつしか肥満気味で不細工な体型に。持ち主に似るのか? と恐怖すら覚え、この悪循環を断ち切るために使いはじめたのが、「ちんぎれや」のがま口だ。

とはいえ、ここは古裂の専門店。古裂はいわば布の骨董品で、美術館に並ぶような江戸時代以前の貴重なものから、明治や大正時代のものまで扱っている。かつての特権階級が愛用した小袖や、南蛮船で運ばれてきたものなど柄や種類も豊富。しかも、現在の織機や材料では再現できない生地がほとんどだそう。

「日本では京更紗や堺更紗がありますが、これは南蛮船で運ばれてきた海外のもので、大名などしか手にできなかった品です。こちらの縞柄は備前の熊野染」と、ご主人の中村年希さんの話に興味は尽きない。
古裂は触るのも緊張するが、名刺入れやがま口に仕立てられた小物なら、気軽に楽しむことがができる。

「これはどこぞのセレブの着物だったのか知らん」などと妄想しつつ、がま口を選ぶのは楽しい。私は小さな豆がまを小銭入れにしているが、化粧ポーチサイズまであり、専任の職人が丁寧に手づくりしているため、どれもパカっと大きく開き小銭などを取り出しやすい。
しかも、見た目以上にたっぷり入る。だから、つい入れ過ぎて……と、悪循環に陥らないようにご注意を。

豆がま1000円から。右上からがま(中)4800円、3200円。ポーチ5500円。右から豆がま2300円、2000円。

【DATA】
ちんぎれや
住所:京都市東山区縄手通三条南入ル元町372-1
Tel:075-561-4726
営業時間:10:00~18:00
定休日:なし

(choice&text:Kyoko Naito photo:Sadaho Naito)
※この記事は2018年9月6日に発売したDiscover Japan10月号の記事を一部抜粋して掲載しています