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【連れて帰りたい京都】「松屋藤兵衛」の珠玉織姫

2018.10.4
【連れて帰りたい京都】「松屋藤兵衛」の珠玉織姫

いまは何でも取り寄せて買える時代。でも、せっかく京都を訪れたなら足を運ばないと聞けないつくり手の話とともに買って帰りたい、京都ならではのいいものを厳選してご紹介。

織姫さまにも差し上げたい甘い5つの口福

大徳寺のすぐそばに店を構える「松屋藤兵衛」といえば、紫野松風が有名だ。松風は味噌の力で生地を膨らませたカステラのような菓子で、お茶会でもおなじみの名品。これもぜひ、食べていただきたい銘菓だが、私がお土産にも買い求めるのが珠玉織姫だ。

砂糖をすり蜜状にし、米粉を混ぜてつくる干菓子なのだが、意外と甘さも控えめ。中がほどよく軟らかい食感が独特の歯触りで、食べだすと手が止まらなくなる。乾燥の調節だけで、このしっとり加減を生み出すため、天候に左右されるデリケートな珠玉織姫さま。姫さまだけに、お姿も小さくて愛らしい。店が位置するのは、西陣織で有名なエリアに近いこともあり、白、赤、黄、青、茶と糸玉をイメージしているそう。

「私の祖父の代で創作した菓子で、昭和20年代にお茶会に出された記録が残っています。お菓子を収める木箱や、菓子を取り分ける陶器皿も、糸巻をモチーフにデザインしたものなんです」と、ご主人の前野恒治さん。

そして、驚くのが風味。5色がすべて違う味に仕立てられていて、当時としては斬新な干菓子だったと思う。だから、飽きない。前述の順番に、ゴマ、梅肉、ショウガ、柚子、肉桂の風味がはっきりと味わえる。一部の色づけ以外はすべて天然材料で表現されており、香料は使わない。

「昔と同じように自然のものだけで味つけし、柚子は風味のよい京都の水尾産をすり下ろして使います」と、面倒なことこの上ない。でも「文化や伝統には面倒なことがつきものですね。でもそれを排除しては、守れないものがありますから」と、サラリと語るご主人。
箱入り娘の珠玉織姫は、これからもずっと慈しむようにつくり続けられる。

木箱入りは陶器製の小皿もセット2300円。袋入りもある(650円)。完売することも多く予約がおすすめだ。

【DATA】
松屋藤兵衛
住所:京都市北区紫野雲林院町28
Tel:075-492-2850
営業時間:9:00~18:00
定休日:木曜(祝日営業、水曜不定休あり)

(choice&text:Kyoko Naito photo:Sadaho Naito)
※この記事は2018年9月6日に発売したDiscover Japan10月号の記事を一部抜粋して掲載しています