TRADITIONS

俳優・井浦新の愛する「縄文」

2018.8.27
俳優・井浦新の愛する「縄文」

歴史好きな父親に連れられ、幼少期から博物館や美術館に足を運んでいたという俳優の井浦新さん。現在行われている東京国立博物館の特別展「縄文―1万年の美の鼓動」で展示されている出土品の中にも、これまでに全国各地で目にしてきたものがあるのだとか。

縄文の精神性は、いまを生きる僕らのヒントになる。

特別展「縄文-1万年の美の鼓動」の会場で、遮光器土偶を見つめる井浦さん。

「家族旅行で縄文や弥生の資料館、野外博物館などによく連れて行ってもらいました。槍や土器をつくるワークショップに参加したり、家にも土偶のレプリカがあったりと、僕にとって縄文は見慣れた懐かしい存在でした。とはいえ当時から縄文に特別な思い入れがあったわけではなく、縄文に深い興味がわいたのは、大人になって日本美術に没頭し、岡本太郎さんの著書を読んだりしたからなんです。

岡本さんは東京国立博物館で見た縄文土器に強い衝撃を受け、縄文の造形を『美しい』と表現しました。それまで僕にとって火焔型土器や土偶は見慣れたもので、アートとしてとらえるには少し異形だったため、自分の中で縄文を言い表す言葉を見つけられずにいました。それを岡本さんが『美しい』と表現したことで、胸を張って縄文を美しいと言っていいんだと開眼したんです。縄文にのめり込んだのは、そのときからです」

全国を訪れるたびに各地の資料館や博物館へ足を運ぶようになり、多くの縄文の遺構を見て歩く。その機会を重ねていくうちに、前期、中期、後期といった時代による流行やエリアによる特徴を把握できるようになり、より深く縄文に惹かれていったと語る。

「『仮面の女神』と呼ばれる国宝の土偶が茅野から出土していますが、周辺からはその友達のような土偶も出てきているんです。ということは、当時仮面の女神を見て『これはすごいぞ!』と感動した周辺の人たちが、集落に戻って自分なりの仮面の女神をつくることで流行になったんだろうな、などと思いをめぐらすことができます。今回の縄文展では、出土品が時代ごとに並べられているのでそういった流行や変遷がわかりやすいと思います」

日本美術の枠の中で、造形やアートの視点から縄文に興味をもった井浦さんだが、いつの間にかその精神性に魅了されていったという。

「造形のおもしろさももちろんですが、つくられたものに込められた縄文の精神性も非常に興味深い。感じ取りたくても感じ取れないミステリアスな部分ですが、土器の装飾や土偶にはすべて意味があります。死者への弔いや自然への畏怖、あるいは感謝の意を表したものなど、自然と共存している感覚をもっていたこともわかります。縄文人は自然と隣り合わせの暮らしの中で文化を発展させ、争いのない平和な暮らしを1万年も確立していました。僕らは便利な世の中で生きていて自然への畏(おそ)れを忘れがちですが、突然訪れる自然災害に恐怖をよみがえらせます。それでも時が経つと苦しみや悲しみは昔話になってしまう。現代人が自然や平和へのとらえ方を取り戻していまを生きるために、縄文から学べることが多くあるのではないでしょうか」

<Profile>
井浦 新
俳優、モデル、クリエイター。現在、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(毎週火曜21時~)に出演中。京都国立博物館文化大使を務めるなど日本の文化に造詣が深く、その価値を広く伝える活動を行っている。

(text: Akiko Yamamoto photo: Kazuma Takigawa)
※この記事は2018年8月6日に発売したDiscover Japan9月号の記事を一部抜粋して掲載しています。

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