ARTS & CRAFTS

東京の伝統工芸品をブランディング。「東京手仕事」とは何か?

2017.11.22
東京の伝統工芸品をブランディング。「東京手仕事」とは何か?

東京は、昔も今も最先端を行く

世界が注目する最先端の街、東京。めまぐるしいスピードで変化するこの街では日々、人々を驚かせる新しい何かが生まれている。テクノロジー、ファッション、アート、サービス、そして食。数ある東京発信の最先端の中に、手仕事もあると言ったら信じられないだろうか。そもそも、東京に手仕事があることすらあまり知られていないかもしれない。
しかし思い起こしてほしい。かつて東京は一大消費地、江戸。街にはあらゆる分野の職人が集まり、人々の生活や生産を支えるものづくりを担ってきた。大量の消費のための、手仕事による大量のものづくり。職人たちはそんな中で技を磨くと同時に、江戸独自の美意識「粋」が、ものづくりを洗練させていった。
技と美意識は親から子へと、あるいは名人への弟子入りという方法で継承されていく。その間も最高の賛辞「粋だね」を求め、ものづくりは常に進化してきた。東京の手仕事はいまも最先端。そこには、そんな背景がある。
そんな江戸職人による粋な手業を、国内と世界に向けて発信しようという思いではじまった「東京手仕事」プロジェクト。商品開発と普及促進という二本の柱で進められ、このプロジェクトを通じ、デザイナーとの共同開発や、職人の新たな挑戦により生まれたものだ。
世界に向けての発信も、着実に実を結びはじめている。フランス・パリで開催された世界最高峰のインテリアとデザイン関連見本市「メゾン・エ・オブジェ」にも出展が叶った。世界からたくさんの目利きが集まる場で、「東京手仕事」ブランドは大きな注目を集めた。同じタイミングで、パリ市内のセレクトショップ「DISCOVER JAPAN PARIS」にて期間限定の展示販売会が行われ、展示会場や店舗内で行われた職人達の実演を目の当たりにした来場者から感動の声も多く聞こえた。こうした機会を確実に捉え、販売につなげる新たな仕掛けづくりにも取り組んでいる。
いにしえより東京の人々の生活を支えてきた伝統の技の数々が、新たな第一歩を踏み出している。

「東京手仕事」からうまれた名品の数々

東京の「粋」とデザイナーの感性が競演して生まれた、東京の手仕事。その一部を紹介しよう。

右)角、中)六角、左)丸 各4536円 【問】木内籐材工業 Tel:03-3941-4484

木内秀樹さんの「籐と和紙のうちわ」

製作者の木内秀樹さんは、籐家具・籐敷物の製作に90年近く携わってきた木内籐材工業の3代目。子どもの頃から親しんできた籐の魅力をもっと広く知ってもらいたいと、日夜考えてきた。デザイナーからの提案「籐のうちわ」をかたちにしたこの商品の骨組みは籐、和紙には無形文化遺産の細川紙を用いている。しかし、デザイナーのイメージをかたちにする過程では、思わぬ苦労も。通常うちわの骨組みは放射状であるのに対して、デザイナーの提案は骨組みが渦巻き。しなり暴れる籐を、どう固定してシンメトリーの美しい骨組みにするか。さらにどう和紙を張るか。試行錯誤の末生まれた美しいうちわに注目だ。

一個入り 5万1840円 全4種類のバリエーション 【問】森銀器製作所 Tel:03-3833-8821

韮澤竜興さんの「玉盃 ながれ」

銀の盃に酒を静かに注ぐと、盃の中にふわりと丸い玉が浮かび上がってくる。盃を揺らすと玉もゆらゆら揺れる。飲み干すともちろん玉はなくなるが、酒とともにストンと腹に収まったようで見えないパワーを授かった心持ちに。「玉盃 ながれ」は、その名の通り水の流れのような美しいラインがデザインされた銀の盃。このラインは鎚を正確に振ることで生み出される。製作したのは、森銀器製作所の韮澤竜興さんだ。金工職人として25年の経験をもつ韮澤さんだが、デザイナーが提案したこのラインを再現するのには、いつもよりも時間を要したという。

右)石の上にも三年、中)笑う門には福来る、左)縁の下の力持ち 各1万800円 【問】松崎人形 Tel:03-3884-3884

松崎光正さんの「ことわざざむらい」

これらの人形は江戸に暮らす諺家(ことわざけ)の三兄弟という設定で、それぞれに名前もあり座右の銘もある。長男・石乃進は「石の上にも三年」。次男・福乃進は「笑う門には福来る」。三男・力乃進は「縁の下の力持ち」。それぞれ、なるほどと納得させられる顔つきでポーズを決めている。江戸木目込人形の伝統的な技でつくられた三兄弟。製作者は、松崎人形・3代目松崎光正さんだ。松崎さんは節句人形だけでなく、今回、デザイナーとのコラボから生まれた「ことわざざむらい」のような創作人形も手掛ける。創作の原動力は「人形は飾られて鑑賞されるだけの存在ではない」という思いだ。

江戸切子「金魚」  4万3200円 【問】但野硝子加工所 Tel:03-5609-8486

但野英芳さんの「江戸切子『金魚』」

グラスの中で、赤い金魚が尾びれを揺らめかせて泳いでいる。伝統的な江戸切子を知っている人なら、このグラスが江戸切子職人によりカットされていると聞いて驚くのではないだろうか。伝統的な江戸切子は、直線のカットを交差させてつくり出す幾何学模様が多いからだ。江戸切子「金魚」の製作者である但野英芳さんの場合、デザインの中心に生物や風景といった有機的なかたちをもつモチーフがあるという。グラスに水を満たすと、金魚に動きが加わる。グラスを使うたびに金魚に命が与えられ物語がはじまる。そんな楽しさのある、江戸切子のグラスだ。

焼き立てパンも切れる包丁 (柄:黒柿) 3万2400円 【問】八重樫打刃物製作所 tel:03-3697-5487

八重樫宗秋さんの「焼きたてパンも切れる包丁」

湯気を上げる焼きたての食パンに、この包丁を下ろすとどうだろう。刃はすっと入り、下までくる間にきれいに切れる。パンはつぶされることなく、ふわふわのままだ。製作したのは、八重樫打刃物製作所の4代目・八重樫宗秋さん。ルーツは刀匠で、代々継承されてきた総火造りの技で現代のニーズにこたえるさまざまな刃物を製作している。プロが使う包丁のほか、たとえば食品メーカーの工場の生産ラインで使用する刃などもオーダーを受け製作する。柄は黒柿、ブビンガ、楓(ちぢみもく)の3種類の稀少材で用意されている。

≪「東京手仕事」の商品はここで買えます≫

日本橋三越本店本館5階で、「東京手仕事」商品を常設販売。受注生産商品のオーダ
ーも受け付けている。

日本橋三越本店

住所:東京都中央区
日本橋室町1-4-1
Tel:03-3241-3311
営業時間:全館10:30 ~ 19:30

文=木下のぞみ 写真=服部希代野、野口祐一(商品)

「東京手仕事」プロジェクトに関する問い合わせ先

公益財団法人東京都中小企業振興公社 城東支社
住所:東京都葛飾区青戸7-2-5
Tel:03-5680-4631 mail:craft@tokyo-kosha.or.jp

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