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宮城県石巻市が「ハコモノ」で生まれ変わる

2017.1.20
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「ハコモノ」と聞くと、各地で行われた公共施設建設事業を思い浮かべるかもしれません。しかし宮城県石巻市で進むハコモノ整備は、無用の長物を生む心配は無用。その理由とは。

ISHINOMAKI2.0が生み出したのは、人が集まりつながる場所

2011年の震災をきっかけに生まれた「ISHINOMAKI2.0(以下、石巻2.0)」という団体。地元商店街の店主をはじめとして、首都圏の建築家や街づくり研究者、広告クリエイター、WEBディレクターなど、さまざまな職能のスペシャリストたちによって構成されており、皆が一様に若く、どのように近い未来と遠い将来にわたって自立復興していくかについて、自由闊達に意見をぶつけています。

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後に代表となる石巻出身の松村豪太氏は、毎日つぶさに被災後の街の様子を見ながら冷静に状況を分析し、石巻の未来のために立ち上がった人物です。「地震の影響で石巻の沿岸部は地盤沈下しましたが、石巻市街地の通りはシャッター街化し、元から停滞・沈下していました。それが震災をきっかけに、もっとオープンでクリエイティブな、バージョンアップしたまちづくりができると考えたのです」と語りました。

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2011年11月には、石巻2.0とものづくりの場「石巻工房」の発足にかかわった建築家・芦沢啓治氏らと世界的な家具メーカー・ハーマンミラーの職人たちによって、商店街に面したビル1階の駐車スペースをギャラリー・工房として改修。手前の路面側を石巻2・0が自らの拠点としながら、「IRORI」と名づけたコミュニティスペースとして運営をはじめました。

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そして石巻2.0は一般社団法人化を経て、IRORIを面積2倍にしてリニューアルすることを決定。DIYを主体とした数ヵ月の工事を終え、2016年2月にオープンしました。「被災地では復興事業の規模が大き過ぎて、地元の人の復興への意識がだんだんと他人事になりつつあることを心配しています。今回工事に参加したことで、場所が自分たちのものになった感覚がありますね。すべてをDIYというのは無理ですが、自分たちでできることを確認して考え続けることが、おもしろい街をつくることにつながるのではないでしょうか」と松村代表は語ってくれました。

自由でフラットなつながりが再生と革新を生み出す

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松村さんは、石巻2.0が街で展開してきた歩みを振り返り、次のように分析します。「さまざまなテーマでプロジェクトを立ち上げて動かしてきましたが、結果として“柔らかい場所”をつくってきたように思います。決して立派ではなくても、常にあることが大事。それぞれの場に人が集まることで、場がドライブして次の展開を生み出す。新しくできたIRORIも、何かを生み出そうとする多様な主体が集まってフラットにつながれることで、新しい価値を創出できるようになればいいと思います」。

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石巻2.0は「新しいことをみんなでやっていこう」という同じ志を抱く人々で構成されています。もちろん、常に門戸は誰に対しても開かれています。シェアオフィスのルールも極力設けず、フレキシブルに対応。そして「まちのロビー」を掲げるIRORIでは今後、映画上映会やライブ、市民学校のプログラムが頻繁に行われる予定です。少しでも関心をもたれたら、ぜひIRORIを訪れてみてはいかがでしょうか。2倍、いや数倍数十倍にもなったリニューアル効果を、体感できるはずです。

 

(text:Jun Kato photo:Kiyono Hattori)