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ライフスタイルショップの元祖? 光原社のつくりかた【第二回】

2017.1.20

光原社の敷地内には、商品を扱うメイン店舗の「新館・旧館」の他にも、さまざまな機能を持った建物が建ち、まるで一つの街のよう。喫茶店すらまだ珍しい時代に可否館を併設するなど、現代の「ライフスタイルショップ」を思わせる及川四郎氏の先見の明に驚かされます。

人や時代の変化と共に変わり続ける小さな街

現在の光原社は、自社の工房で製造する漆器や全国の焼き物などを扱う「新館・旧館」のほかに、応接室として使われている「ゑげれす館」、世界の民芸品や衣料など扱う「カムパネラ」など、複数の建物が中庭を囲むように寄り添い、小さな街を形成しています。一歩踏み込めば創業者の及川四郎が宮沢賢治と思い描いたイーハトーブの夢や、柳宗悦から受け継いだ民藝の精神に触れることができます。

民藝店をはじめた頃から、母家と敷地内の改修に取り組んでいました。’72年には遠方からはるばる足を運んでくれる人々がゆっくりと過ごせるようにとの想いから、喫茶「可否館」を開業。さらに’73年には「マヂエル館」、’74年には「イーハトーブ館」を建設しました。

取り扱う品についても、民藝、ファッション、家具と四郎氏のものへの興味は広がり、叶うことはありませんでしたが、可否館では食事の提供も考えていたといいます。いまでは一般的になったライフスタイルショップの構想が、90年も前に四郎の中に描かれていたのです。

変わることを恐れず、むしろ楽しみながら前に進む。’74年、四郎氏が79歳の生涯を閉じた後も、彼の想いを受け継ぎ光原社を支える人々がいます。洒落た制服に身を包み、敷地内を隅々まで掃き清め、今日も温かく旅人を迎えています。

時間をかけてゆっくり楽しみたい、光原社のあれこれ

「新館・旧館」

材木町の通りに面したメイン店舗。旧館には、漆器や和紙、型染めなどの布ものが。新館には全国の焼き物や沖縄のガラス製品が中心。2 階は、松本民藝家具や北欧家具、海外のインテリア雑貨のほか、ホームスパンや衣類が並びます。

 

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可否館

クラシカルな空間が魅力の喫茶店。松本民藝家具やメキシコの豚革の椅子、ステンドグラスが調和する空間で、丁寧に淹れられた香り高いコーヒーや、名物のくるみのクッキーをいただきながら寛ぎの時間を。店舗で販売するうつわが使われているのも魅力です。

 

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イーハトーブ館&カムパネラ

イーハトーブ館では年に数回、企画展が開催され、期間中はつくり手と使い手をつなぐ特別な空間に。カムパネラは世界の民藝品やアクセサリー、衣類などを扱う小さな雑貨店。

 

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資料室

民藝の巨匠たちの作品や資料、四郎に宛てられた書簡など、光源社ゆかりの品を展示しており、事前に予約しておけば無料で見学することができます。2階にはオリジナル漆器を製作する「うるし工房」があります。

 

第三回へつづく

 

text:Chiho Iwakoshi photo:Satoshi Nagare

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